勇者さんの旅路。

□ヴォルフドルフ
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「今日は絶好の〜っ!!」

「別に絶好ではありませんね、曇りですし」

宿の前でうーんと伸びをするパルテだったが、アイの一言で停止する。

日が出てるわけではなく、
寧ろ雲に太陽が隠れている状態。

「曇りだけど寒くも暑くもないよ?」

「そういう事ですか…」


そう、今日はこの間冒険(シナリオ)屋で買った資料を元に、
パーティを組んでからやっと、
初の冒険に出るわけだ。

「ここ数日色々あったから、久しぶりに街の外に出るんだね」

俺の服の裾をくいッと引っ張るメルフェス。

思えば2日間もエルメナームの外に出なかったんだよな。
ユキとアイが喧嘩して、仲直り。
これが1日目の思い出。

2日目は情けないけど、俺がアイを誘拐しようとした奴に、
ぶん殴られて怪我したおかげで半日爆睡。


でも剣の使い方はバッチリだ。
訓練所でレクさんに剣の抜き方を教えてもらったし……
抜き方しかバッチリじゃねぇ…

そういや、帰りに変な奴に会ったっけ。

ま、いっか。


「貴方達、またここに戻ってくるのでしょ?」

朝早いっていうのに宿の玄関先まで
見送りに来てくれるお嬢様とその執事。

ふわぁと1つあくびをするメロティア。
紫色の髪の毛は少しボサボサ。


「……何でアンタらいんの」

「はぁ?わたくしが見送りに来てやってるのですわ。感謝なさい」

そう言ってメロティアはふんっと偉そうにするけど、

「誰も頼んでないので、部屋に帰って頂いても結構です」

「なっ!?」

冷たく目を向けたアイに論破される。
こんな光景、何回見たっけかな…

「む?冒険終わったら、また帰ってくるのっ?」

「その冒険(クエスト)が終わって、他に行く宛がないのならば、一旦エルメナームに帰ってくるのが妥当ですよ」

「無闇に変な方向に進んで迷って野宿とか危険だもんなぁ…」

「そろそろ行かないの?」

また、メルフェスが俺の服を引っ張る。
子供って待つの苦手だよな。

「だな。行くか」

「じゃ〜ね〜!」

「行ってらっしゃい。気を付けるんですわよ」

「皆様のご無事を祈っております」

宿の玄関で手をヒラヒラ振るメロティアに、
礼儀正しく一礼するケイトさん。

そんな2人の見送りを背に、
俺達は宿を右に、温泉街を抜けようと歩き出す。










「………あのうぜぇの居なかったな」

「見捨てられてるんじゃないですかね」
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