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□君と花火
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夏がやってきた。

ふと初めて雲雀さんと花火を見に行くことになった時のことを思い出す

八月、夏真っ盛り

付き合い始めの俺達。

「あの時は確か…」

並盛神社の祭りに来ていた

茹だるような暑さの中、止まない蝉時雨

夜まで花火はお預け、祭を楽しんでいた二人

手にわたあめを持ち必死に雲雀の後を追い掛ける

「雲雀さん!待ってくださ…っ!ぅ、あだっ」
「……全く、何やってるの」
「っつぅー…だ、だって雲雀さんがっ…!」

反論をぶつけようとしたがそれは叶わず遮られる
「僕が?何?」
「あ、いえ…ナンデモアリマセン」
「そう、ほらじゃあ早くいくよ」

相変わらず素っ気ない雲雀
込み上げる寂しさ、それを掻き消すように
空いている方の手を返し「暑いですね、今年の夏は」
場の空気を和ませようとしたが返事がない。

寂しくなんてない…絶対ないぞ
言い聞かせる

そこから射的、金魚掬い、あるものを全て遊び尽くし満足したのか
よそ見してた

花火の時間が近付いた頃
「あれ…雲雀さん?」
「………これって」
「迷子ー!?」

一人で呟く
そう 二人で花火大会にきたが 案の定綱吉は迷子になったのだ

「はっ…はぁ…ひば…りさっん!ひ…っはぁ」
走る。息を切らして

居る場所なんて見当がつかなかった…例年、雲雀は風紀委員の仕事で一緒に祭…増してや花火なんて行けた覚えが無かったから

迷子となり胸の内が苦しくなる。
ここか、あちらか
思い付くまま夢中で探す

「綱吉!」
後ろからの声


「!!雲雀さんっ!」

思わず走って駆け寄った

「心配したよ…君の姿が突然消えたから」
雲雀が右手を差し出す。
雲雀さんから…!?嘘!…そんな考えも
「いらないならいい」
「あっいりますいります!……………」
手を取るがやはり恥ずかしいので視線を外す

「……今日は…もう帰ろうか」
「花火まだですよ?!」
「いいんだよ花火なんて」
「んなぁー!?」
「それ以上言うと…さ」
「…!っう…んむ…」
いきなりのことに頭が回らない

「そんなに驚くことかい?これ以上のこといつもしてるじゃない」
「…っ」
それどころじゃなかった。余裕がなくなり
「…帰りましょう」

「そう?もっとしてもよかったけど」
「ひっ雲雀さんの変態!!」
「嬉しいくせに」
「……」

歩を進める
帰ろうとするうちに、花火が上がり始めた。

神社を出たところで立ち止まる。
「またきましょうね」
「そうだね、考えておくよ」

花火は儚く空へと消えた。


−−−−「あぁ…そんなこともあったなぁ…」
薄い笑いを浮かべる

そして
「何、してるの早くいくよ」
今年も雲雀さんとお祭りです

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