文
□刹那の光
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次に遙が目を開いた時
凛の姿は何処にも見えなかった。
身を起こして初めて
自分が自室のベッドに横たわっていた事に気付く。
いつの間に移動したのか、覚えがない。
庭に面した座敷にいたはずなのに
――やはり、今のは夢だったのだろうか。
そうだとしたら。
何とももの恥ずかしい夢だったと
遙は小さく首を竦める。
「泣き虫なのは……お前の方なのに」
そう口にして
遙はぱったりと仰向けに寝転がった。
布団を顔の上まで引き上げると
ぎゅっと目を瞑る。
これ以上
体から光を失わないように。
そんな遙の右肩に
まだ新しい、黒いしみが見えたのは
夢か、現か。
end.
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