□捕食者RH
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昨日の夜も散々噛まれたとか
折角二人でいるのに凛がテレビばかり見ていて面白くないとか
その他諸々理由はそれなりにある。


ムカついたから、と言うと犯罪者めいて聞こえ無くもない


とどのつまり、衝動が8割方を占めていた。





凛の右手を、思い切り噛んでやったのだ。



上目で凛の顔を伺うと、驚いて此方を振り返ったらしい凛が大きく目を見開き口をぱくぱくさせているのが見える。

そうだ、その顔を見てみたかった。
これはいつもの仕返しだ。


本当は凛がよく俺にやるように、首筋に歯を立ててやりたかったのだが
しっくり角度が見つからなかったというか、なんというか。髪を退けるのも煩わしかったし。


まぁそんなことは今はどうでもいい。


あまりに予想通りだった凛の反応に内心ほくそ笑みつつ、
もう一噛みしてやろうと少しだけ口を開いた



―――その瞬間だった。









凛の指がその歯と歯の僅かな隙間をすり抜け
更に奥へと入って来たのだ。





「ふ……むっ」




まずいと思ったがもう遅い。





凛の指は無理やり歯の間をこじ開け、舌を言葉通りねっとりとなぞったかと思うと
3本に増やされた指が口の中を縦横無尽に暴れ回った。





「ふ……っあ、ぁ」



上手く空気が吸い込めない上、人差し指で上顎をなでくり回されて
くすぐったいような、その何とも言えない感覚に襲われじんわりと涙が浮かぶ。




そのぼやけた視界に凛の顔が映る――
……いや、待て。どうしてそんな真剣な顔をしているんだ。






「あ……」





やっと引き抜かれた指に思わずほっとしたのも束の間。

息をつく暇も無く唇に熱いものがぶつかった。

ぼんやり開かれたままだったその中に凛の舌は容易く浸入し
先程指で荒らされた箇所になぞるように慈しむようにじっとりと舌を絡ませて行く。





「んんっ…ふぁ……」




最後に俺の舌をはみ、漸く凛の顔が離れて行く。


必死の思いで酸素を取り込みながら
堪らず脱力しきった体を凛の胸に預けると、凛は子をあやすような手つきで
頭や背中を撫でた。
一体何のつもりだったんだ。




何とか落ち着いた所で顔を上げるも、凛の方に目をやることは出来なかった。
何せ、はじめに仕掛けたのは俺なのだから。それも仕返しのつもりだったのに。


これじゃ返り討ちあったも同然だ。
凛も恐らく察しているだろうと思うと、余計顔が熱くなる。






――そんなこんなで余韻と羞恥にいっぱいいっぱいだった俺は、気付けなかった。




凛が、俺の歯痕がついた自分の指を
恍惚とした表情で見詰めていた事に。







end




―――




凛ちゃん喋ってないあれ



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