□君と
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(凛がオーストラリアに発つ前のお話)







七瀬のやつ、ちゃんと来るのかなぁ
いや、来てもらわないと困るけど。




場所は凛たちが住む町から
少しだけ離れた公園。


ここから南へ向かえばすぐ近くに
小さいながらも
中々立派だと噂の水族館がある。
凛はここで、もう15分程遙を待っていた。




前回のスイミングスクールの帰り
凛は遙に一緒に行こうと声をかけた、のだが。



約束の14時まで、あと5分足らず。
なのに、遙が来る気配は一向に無い。








確かに、急に言い出して
半ば強引に約束を取り付けたのは凛だ。

それでも、渋々ながらも
遙が首を縦に振ったのも事実であって。




もたれ掛かっていた柵から離れて
角にあるブランコに座り込むと、凛は1つ息をついた。




父親に借りた腕時計に目をやると、
既にもう14時を5分ほど過ぎている。


暫く1人ブランコを揺らしていたが、相も変わらず遙が来る様子は無い。

凛はしかし、帰る気は起こらなかった。



――七瀬は普段からあんなだけど、約束を破るような奴じゃない。



思うというより、そう信じていたかった。

もう少し、待ってみようとブランコから手を離すと
凛は鉄棒の上に腰を降ろした。




――なぁ、来いよ七瀬
今日を逃せば、俺は。




ぐっと唇を噛み締めると、凛は鉄棒に足をかけ
くるりとひっくり返った。
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