ワタシと標的

□それは偶然か否か
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「ただいまー」
「「おじゃまします」」


獄寺くんと山本に先にオレの部屋に行ってて、と伝えてリビングの扉を開いた。


「おかえりツナ兄」
「あれ? 母さんは?」
「ママンならランボ達と買い物に行ったよ」
「そっか。教えてくれてありがとな、フゥ太」


ランキングブックにランキングを記入しているフゥ太。これの為に母さん達と買い物に行かなかったんだろう。
オレは適当にお茶菓子と飲み物を持って部屋に行き、テーブルの上に置いた。


「よし、揃ったな。雲雀や了平達にはオレが後で説明しに行くから心配すんな」


リボーンが教えてくれたのは、銀雪って人が女であること、裏の世界では強者で有名だということ、所属している組織が何処にあるかわからないこと。嘗めてかかると死ぬぞ、と最後に念を押された。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 組織の場所がわからないってどういうこと!?」
「そのまんまだ。奴らは居場所を掴ませていない。それなりに腕を持ったやつが情報を操作してるんだ」
「恐ろしい組織ですね…。何故何処にも所属しないんスか?」
「さぁな」
「要はそいつらに気をつけてツナを守ればいいんだろ?」
「そうだぞ」


あれ? でも………。


「何で水沢さんのこと気をつけろって言ったんだよ? その人女の人なんだろ?」
「情報が入ってすぐあいつが来たからな。髪は短いが銀髪だった、切ったのかもしれねぇ。変装くらい簡単にできる。顔も女っぽかったし、念には念をだ。因みにこの情報はかなりのレアだぞ」


話し合いは暗くなるまで続いた。それだけヤバい人なんだ。でも、水沢さんは嫌な感じがしなかったし、大丈夫だろうとオレは布団に入り目を閉じた。








「やっぱりきついなぁ…」


まだ馴染めないサラシを巻いた胸をペタペタと触って違和感と格闘する。馴染む日がくるのか…、不安で仕方ない。
指定のズボンを履いて、Tシャツに手を伸ばした時だった。


「シェナー!」


馬鹿なアランが部屋に入ってきた。勝手に入るなと言ったのに。


「悪い! 着替え中だったのか! オレラッぐふはっ!」


ふざけたことを抜かすアランに跳び蹴りをプレゼントして追い出し、TシャツとYシャツに腕を通して家を出た。








さすがに屋根の上を飛んで行く訳にはいかず、普通の道を歩いて学校に来た。門の前にリーゼントの男達が数名立ち、生徒に挨拶をするという奇妙な光景があった。


この学校……大丈夫なの?


目を合わせずに門を通ろうとしたが、声をかけられてしまう。


「水沢悠也だな? 委員長がお呼びだ。速やかに応接室に行け」
「…わかった。応接室な」


やだなあ行くの。扉開けた瞬間にトンファー飛んできたりして。気をつけなきゃね。





誰に訪ねることなく応接室の前まで来た。校舎内の地図も資料に含まれていたからだ。所属している私が驚くくらい有益な情報が沢山あって、情報屋としてもやっていけるんじゃないかと時折思う。
……その殆どの情報を集めているのがアランだという事が気に食わないが。


「失礼しまーす」


ノックをして、注意しながら扉を開いた。が、何も飛んでこない。雲雀はデスクで書類をガリガリ書いてるだけ。


「そこの教科書、全部君のだから持ってって。それと、用が無い時は応接室に近づかないでね」


おぉ…。なんか怖いよこの人。何を考えてるのか全然わからない。背後を襲ってきたりしないだろうな…。


言われた通りガラス製のローテーブルの上にある教科書を空っぽの鞄に詰め込んで、無事に応接室を出ることができた。
職員室で教員に挨拶をして、教室に案内するからついて来いと言われる。学校に通ったことのない私にとっては行動の一つ一つが新鮮で、校内が物珍しい。
教室の前まで来ると、呼ぶまで待ってろと言われ、壁にもたれながら廊下で待つこと数分…。


「おーい水沢、入っていいぞー」


教室に入ると周りがざわざわと騒がしくなる。最初は特に気にもしなかったが、「チビじゃね?」「銀髪だ!」「帰国子女?」とムカつく言葉も聞こえてきた。


チビで悪かったわね!


「イタリアから来ました、水沢悠也です。よろしく」
「水沢の席は沢田の隣だ。あそこの空いてる席な」


これは…偶然……、だよね。そうに決まってる。獄寺隼人睨みすぎ。


窓側の二列目、最後列が私の席で左が沢田。右隣の列の二つ前が獄寺隼人。廊下側の最後列が山本武。私はボンゴレに囲まれていた。何の嫌がらせか。
沢田の隣は好都合だしあまり気にしないでおこう、とイスを引いて座った。


「よろしくな、沢田」
「よ、よろしくお願いします」


授業が始まるベルが鳴り、教室は静まり返る。もっとざわざわしてるものかと思ったが違った。


つまらない授業が終わり昼休みの時間になると、教室で弁当を広げる人、パンを買いに行く人、中庭に行く人、各々が昼食を取る行動を始める。私もその中の一人だ。


「沢田、よかったら一緒に食べない?」
「全然いいですよ! 獄寺くん達も一緒でよかったらなんですけど……」
「大丈夫。気にしてないから」


沢田に獄寺隼人と山本武の紹介をしてもらい、名前が呼べるようになった。一緒に昼食を取ることがあっさりと決まり、私、沢田、獄寺隼人、山本武の4人で屋上に向かい、後でもう一人来ると途中で言われた。
一人加わるのはいい。どうせ守護者の一人だろう。どうして此処に、


「ちゃおっス」


リボーンくんがいるのか。


雲雀が許可でも出してるの?


「ちゃおっス。また会ったな」
「これから毎日会えるぞ」
「毎日来てんの…? あいつに何も言われない?」
「あ、リボーンは特別っていうか…あはは」
「ふーん」


雲雀のお気に入り? そういえば肩に鳥がいたっけ。小さい生き物が好きなのかな。


「極限に腹が減ったぞー!!!!」


バアン! とすごい音と共にバカでかい声が聞こえ、出入口の方に顔を向けるとボンゴレ晴れの守護者、笹川了平が弁当を持って立っていた。


「うるせぇぞ芝生!」
「なんだとこのタコ頭!」
「相変わらず仲がいいのな」


山本武…、素晴らしい思考をお持ちで。というか一気に賑やかになった。


「まあまあ! 時間なくなっちゃうしお弁当食べましょうお兄さん!」
「む、そうだな!」


沢田の一言で大人しくなり、フェンス寄りに皆で腰を下ろした。


「ん? 誰だお前は!」
「ああ、オレは水沢悠也。今日から此処の生徒なんだ。クラスは沢田と同じだよ」
「そうか! ぜひ我がボクシング部へ入部しろ!」
「あーそれは無理。面倒だし」
「なにー!?」
「お、お兄さん!」


何故だー!!!! とか騒ぎだしたが、沢田が宥めてくれてるので無視して持ってきたサンドイッチを食べる。美味い。


「水沢さ、」
「悠也」
「…え?」
「悠也でいいよ。あと敬語もいらない。同じ学年なのに変だろ?」
「うん! 悠也くんは何で日本に来たの?」


はて、何て答えようか。親の都合は…無理だね。一人暮らしだし。日本で暮らしたかった、はちょっとなあ…。うーん…ちょっと揺さ振ってみようかな。


「家庭の事情で。それに、日本になら居なさそうだから」
「何が居ねーんだよ」
「マフィア」
「「「「!?!?」」」」


マフィアと言った途端、その場に居た全員がぴくりと反応して無言になった。リボーンくんは帽子を深く被り片目で此方を見ている。


わあ、なにこれ。


「そ、そうなんだ」
「あっちは例え明るい時でも男の一人歩きは危険なんだよ。日本は平和でいいね」


ムグムグとサンドイッチを頬張り、喋りながら話題をマフィアから逸らす。あ、行儀悪い。
お昼を食べ終わり、彼等は帰りに沢田の家に行くか、山本武の家に行くかの相談になった。今日は午前授業らしい。
私も誘われたが、荷物の整理があるからと理由をつけて断った。実際は初日の報告書を書く為だが。
因みに、私は報告書を書くのが苦手だ。
 


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