ワタシと標的
□次の任務の内容は
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薄暗い静かな部屋。クイーンサイズのベッドですうすうと眠っているは今回のターゲット。
銃口を心臓の位置に向けて、引き金を引いた。
バン、と乾いた音が部屋に響く。火薬の匂いと鉄臭い血の匂いが充満した。
こんなの初めてで、どうしたらいいかわからなかった私は――こうするしかなかった。
選んだ道は正しかったのかな。
目尻から溢れたものは頬を伝って、ポタリと床に落ちた。
「今回もよくやったね。お手柄だよ」
携帯越しに聞こえる優しい声。
声の主は私のボスであるレンさん。
「任務ですから、当然です」
電話をしながらテーブルの上に置いていた書類を手にしてソファーに腰を沈めた。
「ありがとう。今度シェナが時間がある時に食事にでも行こうね」
「食事…ですか?」
「あれ? 嫌だった?」
「い、いえ、嬉しいです! 絶対行きます!」
レンさんも私も任務が忙しくて今は滅多に会えない。当然、誘うことも誘われることもない。
というか誘われたら行くに決まってる。
早く次の任務終わらせてレンさんと食事したい。
「よかった。…本題に入るけど、もう資料には目を通してくれた?」
ほんの少し声が低くなり仕事モードの声になった。
「すみませんまだです。先程手にしたばかりで…」
「そっか、じゃあ電話が終わってからでいいからチェックよろしく。でね、今回シェナに頼む任務のターゲットなんだけど、少し厄介な相手なんだ。長期任務になるんだけど…大丈夫かな?」
「はい」
早く終わらせて食事行きたかったのに…。仕方ない、か。
「ははっ。そう言ってくれると思ったよ」
「お任せください。必ず遂行してみせます」
「ありがとう。あっ、資料に目を通して嫌だったら断ってくれていいからね。シェナは1番頼りになる人だから、失いたくないんだ」
「勿体ないお言葉ありがとうございます。任された任務は全て遂行するのが私のポリシーですから、お断りなどしません」
「確かにシェナは一度も任務を断ったことないね。体調が悪い時は無理しないで言ってくれたらいいよ。じゃ、オレはこれからすることがあるから」
「はい。では失礼します」
ピッ、と機械音が静かな部屋に響く。
長期任務は2年ぶりだろうか、と思いながら一枚一枚資料に目を通していく。
標的:ボンゴレファミリー10代目『沢田綱吉』
並森男子高校 1年C組
同じ学校に守護者が5人通っている模様。
うち一人は沢田綱吉の家に在る。
一見だだの高校生にしかみえない。が、戦闘時は別人。
バレると厄介な相手。
かなりの注意が必要とされる。
これが沢田綱吉。……本当にただの高校生にしか見えない。弱そう。
資料と一緒に入っていた牛柄の服を着た子供と遊んでいる写真がそれを物語っている。
仲間に「殺し屋に見えない。普通にしてればただの美人」と言われる私が人の事言える立場じゃないか。
「ボンゴレファミリー…。今回の任務は失敗するかもしれないなぁ。ふふっ」
それから守護者の情報と容姿、並森男子高周辺の地図、最後に任務についての重要資料を読む。
数多の暗殺組織が失敗で終わっているという情報有り。
それゆえ、少しでも成功する確率を上げる為にターゲットと親しくなり油断している所を狙って暗殺をする。
焦らず行動するように。
日本での潜入任務。生徒として潜り込む。場所は並森男子高校。
「……、……、…………生徒!?!?」
唖然とするしかなかった。