進撃短編

□終わらない恋になれ
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「よし、こんなもんかな」


二人でやったのと、雛さんの手際の良さで、かなり早く片付いた。

昨日の俺の手こずり様はなんだったんだ…

「あの、雛さん」

「ん?」

「毎年、春になると白い花が咲くって言ってたじゃないですか」

「うん」

「その花のこと…みんな知ってるんですか?」

「んー、どうだろうねぇ。
咲いてるところを見たことがある人はいるだろうけど、
それを私が植えたものだとか、毎年咲いてるものだとか知ってる人はあんまりいないだろうね。
毎年春までいられる人も、残念ながら少ないから…
正確に知ってるのは、リヴァイとか、ハンジとかそこらへんかな?
毎年恒例で一緒に見てるし。
あ、でも…」

「でも?」

「来年は、エレンと見たいな」

「……え?」


雛さんは俺の方を振り向いて、微笑んだ。


「来年の春は、エレンも一緒にいようね。
それで…一緒に白い花、見よう」


それは、小さく、困難な希望を秘めた言葉だった。


この人は知っている。

その言葉を達成するのが容易ではないことを。


一緒に見られなかった仲間たちが、たくさんいたから。


だからこそ、雛さんは言うんだ。

なら…


「約束します」

「え?」

「来年の春、雛さんと一緒に、白い花を見ます!
絶対、この約束を守ります!」


守ってみせる。


俺に守れるものなんて、それくらいしかないから。

それすらも難しくても、絶対守ってみせる。


「うん…私も約束、守るよ。絶対守る。
ありがとう、エレン」


瞳に溜まった涙を流さないように、雛さんはにっこりと笑った。




<終わらない恋になれ>


終わらせない。

この恋も、命もすべて。
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