進撃短編

□終わらない恋になれ
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「あれ、エレンだ〜」


振り向くと、そこには書類を抱えて手を振っている女性の姿があった。


「雛さん!」

「庭の掃除?」

「あ、はい。リヴァイ兵長に言われて」

「ご苦労様〜」

「雛さんはどうしたんですか?」

「ちょっとリヴァイを探しててね…見てない?」

「いえ…」


そっかぁ、と呟き、俺の隣にしゃがみ込んだ。


「分隊長になった頃ね、そこに球根を埋めたの」

「球根…何のですか?」

「白い花。名前はいまいちわからないんだけど。
春になったら咲くんだ。
毎年、ああ、また見れたなって…」


長い黒髪をかき上げ、すっと目を伏せる。


「あ…えっと、あの…」

「ごめん、暗くなっちゃったね。気にしないで。
さて、と。仕事の邪魔しちゃったから、そろそろ行くね」

「えっ、あっ、もう行くんですか?」

「え、うん。どうかした?」


まじまじと俺の顔を覗き込む雛さんに、顔が赤くなる。


な、何言ってんだ俺!


引き止めるなんて…
確かに、もう少し二人で話がしたい…けど…


って、何考えてんだよ!!


「え、あ、いや、あのっ」

「エレン。何をサボってやがる」

「へ?……兵長っ!?」

「あ、リヴァイ」

「お前も何してやがる。
書類を持ってこいって言っただろうが」

「だから探してたんだよ〜。
だって部屋にいないんだもん」


はい、と雛さんが手渡した書類を、兵長はペラペラとめくった。


「もう、私にハンジの報告書押し付けるのやめてよね〜」

「俺は他にも処理する書類がある。
あいつの報告書だけに構ってる時間はねぇ」

「だからって!」

「嫌なら訂正事項を説明して本人にやらせればいいだろ」

「その方が面倒なんだもん…」

「なら仕方ねぇな」

「うー…」


二人の掛け合いを見ていると、何だか妙に胸の奥がざわざわする。

団員たちも、よく噂している。
無理もない。


小柄な兵長を膨れっ面で見上げる雛さん。

二人がお似合いだってことくらい、俺にもわかる。


あんな可愛い顔をする雛さんは、兵長でしか見れない。

そんな事実が、余計に胸を苦しくさせる。
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