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□友達以上恋人未満
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「一十木君、す、好きです!付き合ってください!」

「ごめん、俺、好きな人いるんだ。」

だから気持ちは嬉しいけど、そう言って困ったように笑えば、女の子は悲しそうに「わかりました」と言って去っていった。それを見て思わず胸が痛む。

「…好きな人なんて、いないのになぁ。」

はぁ、と大きな溜息をついた。ああ言っておきながら、俺には好きな人などいない。だけど、か「早乙女高校の6大プリンス」の異名を持つ俺は毎日のようにたくさんの告白を受けていた。

ああやって、告白されるのはうれしい。すごく。でも、今みたいにたいして知りもしない女の子と付き合うのは気が引けた。
だからといって素直にその気持ちを言ってしまうと「これから知ればいいから」とか色々言われてそれでも断ると最終的に泣かれてしまうためそうは言えなくなってしまったのだ。正直、告白してくる子の中には俺好みの可愛い子も美人だなって思う子もクラスで仲がいい子もいっぱいいる。だけどどうしても、付き合おうとかそういう気持ちにはなれなくて口からは自然と「ごめん」という言葉がこぼれてしまうのだった。




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「音也は変に純粋すぎんだよ。」

「え?」

昼休み、同じクラスで6大プリンスの中の1人である来栖翔と一緒に昼飯を食べていれば、翔は箸を置いていきなりそんな事を呟いた。

「なにそれ。」

「あんまり期待させるような事すんなってハナシ。」

意味が分からないと俺は首を傾げた。
期待をさせるって、それは翔の方じゃないのかな。…でも、翔は他校に彼女がいるしやっぱり俺が期待させてるの?ていうかまず期待ってなに?なんの話?そう問い詰めれば翔は面倒くさそうにもういいわ!と叫んだ。あ、なんかこういうのトキヤみたい。…先輩つけないと怒られるんだった。トキヤ先輩みたい
それはそうと翔に彼女がいるのは割と有名で、翔はかなりモテるけど告白までする子は少ないようだった。

「…それにしても、これは流石にうんざりしちゃうよなー」

小声で、翔は廊下にちらりと一瞬目を向けてそう呟いた。休み時間になる度にざわつく廊下。それは、俺達を見に来る女の子達のせいだった。最近はもう慣れてしまったけど以前はご飯を食べてるだけなのにめちゃくちゃ見られてへんに緊張しちゃって全くご飯がおいしく感じられなかった。

あはは、と苦笑しながらも、学校に来る前に買ってきたカレーパンを口に含もうとすればその廊下の女の子に「一十木くーん」と手を振られ俺もなるべく笑顔で手を振りかえす。すると、廊下では大きな叫び声があがって翔が溜め息をついた。

「だから、それだって。」

「え?」

「そういうことするから期待しちゃうんだろ?」

やれやれだぜ、そう言って翔はもう一度大きな溜息をついた。そんな事言われたって、無視は出来ないし。…あ、でも翔は軽く会釈してたような気がする。…結局叫ばれてはいるけど。

「お前、マジで好きな人いねーの?」

「…いたらこんなに悩んでないよ。」

「…まーそりゃそうか。音也だもんな。」

なんだか少し馬鹿にしたようなニュアンスの翔に俺は口を尖らせた。…自分が彼女いるからって。

「馬鹿にしてる?」 

「や、だから、お前だったら好きって確信したらすぐ告白すんだろ。」

で、結果がどうであれ俺に絶対報告にくる。そう言い切った翔にどっからそんな自信が湧くんだと笑った。

…でも、確かにその通りかもしれない。今まで彼女どころか好きな人もいたことがなかったからわからないけど、もし振られたとしても俺は確実に翔に言いにいってしまうんだと思う。

なんだか見透かされてるなー、なんて考えていれば翔はいきなり唸りだした。

「…えーっと、なんだっけ、あの、お前の幼なじみ!」

幼なじみ?と俺は首を傾げる。俺の幼なじみって言ったら…

「名前のこと?」

「あ!そう、それ!苗字名前!よく一緒に帰ってるとこ見るけど、好きじゃないのか?」

翔の言葉に、俺は「名前は幼なじみだし、」と苦笑した。

「ふーん、友達以上恋人未満みたいな?」


やっぱり仲良いとそう言う感じになっちゃうんだな、なんて言って翔はまたお弁当を食べ始めた。

…そういえば、考えたこともなかった。
名前とは家がお隣で、今でもおたがいの家を行き来してるけどそれは、なんだろう家族みたいな感じだから、だし。
俺らはもう今更意識するような関係でもなかった。

これからも、ずっとそうなんだと思う。
というか、充分幸せな今を変えたくはなかった。


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「音也、帰ろ!」

放課後、少し息を切らしながらも笑顔でドアの前に立つ名前に俺は大きく頷いて急いでカバンにノートを詰め込んだ。

翔があんな事を言うから、今日は名前のことをずっと意識しっぱなしだった。
今まで、そんな事無かったのに。なんだか変な感じだ。

「…翔の馬鹿。」

「おい、なんか聞こえたぞ。」

え、なにが?と笑顔を作れば翔は「こえーやつ」と苦笑した。
えっと、携帯携帯…。

「あれ?」

「どーした?」

「携帯がない!」

どうしよ!と机の中を探すがやっぱり見当たらない。…どっかで落としたかな。
とりあえず翔に電話をかけてもらうことにして俺は全く整理されてないロッカーを探した
…明日ここ片付けようかな。

「名前、ちょっと待って……………て」

探し途中で、名前を廊下で待たせてる事に気付き焦りながらも“ちょっと待ってて”廊下の方に目を向ければ、そこには俺、ではなく、廊下にゾロゾロと並ぶ俺だとか翔目当ての女の子を睨むようにしてみる名前がいた。

「あ!音也お前携帯カバンの中じゃん!!」

「いだっっ!!」

アホか!そう言って翔に頭をチョップされ、俺は我に返る
再度名前を見れば、名前は普通にして立っていた。翔が必死に何かをいってるようだけど全く耳に入ってこない。
さっきのは、気のせいだったのだろうか。……名前のあんな顔、初めてみた





 
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