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□キミと
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「…ちょっと聞きたいんだけど。

なんでこんなところでお話ししなきゃいけないの?」

私の今いる場所は教室…ではなく、校舎裏。
しかも、人数が増えているのだが、これはどういうことだろうか。

「教室だと都合が悪いから?」

「…都合が悪くなるようなお話なんだ?帰っていいかな、私。」

こうなってくると、されることは分かってる。
5対1はさすがにやばい…かもしれない。

それにしても、仲間を呼ぶだなんて卑怯な女だ。1対1なら私も考えたけどこれじゃ考える意味もない。


「苗字さん、来栖君と別れたんだってね?」

クスクスと嫌味に笑う彼女に、流石に溜息がでた。
やっぱり、その事か。…いや、呼び出される理由なんてその事しか無いけど。

「…だったらなに?まさかそれ確認する為だけのお話じゃないでしょ?」

「っ、あんたが一十木君を誑かしたからでしょ?!」

一瞬、顔を歪ませ、1人の女の子がそう叫んだ。多分、この子は一十木君が好きなんだと思う。…いろいろ誤解がある気がするけど、どーしよ。

「それもだけど、ちょっと私の話も聞いてくれない?」

相手の逆鱗に触れないようになるべく笑顔で話すが彼女達の表情は強張ったままで、まともに話を聞いてくれなさそうだと感じる。
私だったら聞かないだろうし。なんて思っていれば、女の子達の中の1人が「言い訳なんて聞きたくない」と私を睨んだ。…そりゃ、そうでしょうね。


こんなの来栖君と別れた時点で予想はできていた、けど、率先して写メを見せてきた彼女からされるとは思ってもみなかった。
「浮気だよ!浮気!」とかゴチャゴチャ言ってた人からこんな風に呼び出されるのは、良い気はしない。…ていうか寧ろぶん殴ってやりたいくらいだ。あの時は来栖君をぶん殴りたかったがよくよく考えてみると原因は彼女にだってある。
…その前に、私がひっぱたかれるかもしれないけど。

私がこうして考えている間にも彼女達はぎゃーぎゃーと騒いでいて、そのほとんどが罵声ばかりで嫌気がさした。


「来栖君は可哀想だよね!こんな最低女と付き合わされて!」




その来栖君から告白してきたんだけどな、…なんて今言うことじゃないか。
でも、あなたが言うことじゃないんじゃない?と思うのは私だけかな。



「来栖君と付き合って私たちみたいに本気で来栖君のこと好きな子馬鹿にしてたんでしょ?!」

涙を流しながらも鋭い眼孔で私を睨んでヒステリックにそう叫ぶ女の子に私は、は?と声を漏らした。

「…なにそれ、私が来栖君のこと好きじゃなかったって言いたいの?」


思わず、顔がひきつる。なにを聞いてそんな風に思ったんだ。
別れたとはいっても、「来栖君が好きじゃなかった」だなんて私は一言も言っていない。
でも、彼女達は私の言葉なんて無視して叫び続けた。

「来栖君だって、あんたなんかと本気で付き合ってた訳じゃないんだから!!」

「っ」


女の子の言葉に、鼻の奥がつんとした
それは、そうかもしれない。
ずっと無理して、私と付き合ってたのかもしれない。

…やばい、泣きそうだ。



伸びてきた、手。
あー、叩かれるな、なんて冷静に判断している自分が気持ち悪い。…それでいて目はしっかり閉じちゃってるけど。



パン、と響く鈍い音。…でも。

「へ…、」

確実に、当たった音だったのに痛みは感じなくて。
感覚おかしくなった?なんて考えてたらキャー!とか叫び声聞こえるし。
おずおずと、ゆっくり目を開けてみれば金髪の背が低めの男の子の姿があって、泣きそうになった。…ていうか、泣いた。

「…誰が、本気じゃないとか言った?」




ああ、もう、死にそうだ。






 
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