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□しあわせって?
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『世界で一番幸せにする。』

私が告白にオッケーしたとき
嬉しそうに照れくさそうに笑いながら
プロポーズみたいなベタなセリフを言ったのは、


どこのどいつよ。








「ムカつく。」

幼なじみであり、親友の友千香の家でおばさんが作ってくれたらしいフルーツタルトを口に含みながら、特に会話もないこの空気の中私はそう呟いた。

勿論、友千香の耳には入るわけで、酷く驚いたような表情をされる

「え、アンタ信じてんの?」

「信じるも何も、あんな写真見せられちゃね。」


“昨日駅前で来栖君と七海さんが仲良さそうに話してるの見ちゃった。”

大して仲良くもないクラスメートの言葉とみせられた写メに、わたしは朝から頭痛と吐き気に襲われた。
1時間ほど保健室で休んで落ち着いたが、写真は頭から離れなくて。

少し頬を赤らめながらも満面の笑みを見せる来栖君に、それに答えるように笑顔になる七海さん。

写真に写っていたのはまるで、カップルのような2人だった。

「まぁあたしはその写メ見てないから細かいことは分かんないけどさ、彼女にそれ見せるって、かなり大きなお世話ってカンジよねー。」

あたしだったらぶん殴ってるよ、なんて言いながら眉間に皺をよせる友千香に苦笑する。

大方、来栖君のファンなのだろう、とは思っている。
私と来栖君が別れるように、あんな写真を見せたのだろうとしか思えない。


…まぁ、どっちにしてもあの写真に写ったモノは事実なだろうけど。


「それはそうとさ、あるでしょ、駅前で偶然会ってーとか」

「…うん、そりゃ、考えたけど。」

「じゃあ信じてあげなよ。あたしは来栖君が浮気するとは思えないっつーかさ。あんたにベタ惚れだし。」

友千香の言葉に私は押し黙る。
私だって、出来るものなら信じたい。
でも信じようとすればするほどあの写メが頭から離れないのだ。

「…七海さんって、良い子なの?」

「超良い子。」

「あー…どうしよ。」

諦めるようにテーブルにうなだれればだから信じてあげなさいって、と頭を叩かれた。






______


翌日。

「ねぇねぇ、苗字さん。」

「……………なに。」

思わず溜め息をつきそうになりながらも、素っ気なく返事をしてしまう。

例の、来栖君ファンの子だ。
ちらりと友千香を見れば睨むようにその子を見ていた。
…当の本人は、気づいてないみたいだけど。


「来栖君、七海さんとまーた喋ってたよ!」

だから何だと言いたくなる。というか、言ってしまった。

私の言葉に、唖然とした表情をする。ついでに友千香も。

「え、あ、いいの?」

「良いもなにも、私の彼氏だし。女の子と喋ったくらいで口出ししたら来栖君だってヤでしょ。現に私も、普通に男子と喋るし。」

わざわざ忠告どーも。
嫌みったらしく笑顔を作ってお礼を言えば、くしゃりと顔を歪まして教室から出て行った。
…なんなの、ホント。なんて思っていると、友千香が拍手をしてきた

「なに?」

「いや、まさかアンタがあんな風に返すとは思わなくて。ちょー冷静だったじゃん。」

友千香の言葉に笑ってしまう。
そんな風に見えたのなら良かった。
さっきの言葉に嘘は含まれていないが、内心めちゃくちゃ焦っていた私としては安心する他ない。

「嫌だな、嫌われちゃったよ。」

だからそんな冗談を言って笑い飛ばした。
あの子来栖君ファンだし、あんなことしなくたって嫌われてるだろうけど。

「七海さんねー。」

「来栖君、春歌の話とか名前の前ですんの?」

「まさか。一十木君とか四ノ宮さんとか。プリンス様達との話ばっかり。」

いや、楽しいから良いけど。と付け足せば友千香は納得したように「あー…」と呟いた。

「まぁそんな、公衆の面前で仲良くしてるくらいならやましいことはないと思うけどね。」

実は、私と来栖君が付き合っているというのは何故か校内でかなり有名で。
来栖君もそのことは知っているし、他の女子と2人きりで仲良くしていればどんな流れであれ私の耳に入るのは充分理解している筈だから、冷静に考えれば七海さんに気持ちがあるとは考えられない。

実際、あーゆー子達から色々“私あなたを心配してます”的な言葉を貰うわけだし。
内心では、さっさと別れろとか思ってるんだろうけど。

そこまで頭の中で考えられるのにやっぱり不安を感じている私は来栖君を信用し切れてないのだろう。








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