short
□たとえば君が、
1ページ/1ページ
例えば俺が、君のことをすきだと言ったとして
君は笑って「私も」と言ってくれるのだろうか。
例えば俺が、嬉しいことがあったとして
君は“自分にとっても嬉しいこと”だと感じてくれるだろうか。
例えば俺が、傷ついていたとして
君は何も言わずに側にいてくれるだろうか。
全部全部、俺は出来るけど、彼女は何も感じないかもしれない。
もしかしたら俺の片思いで、彼女はそれに付き合ってくれているだけかもしれない。
「……ねぇ、トキヤ。」
「なんですか?」
課題に集中しているトキヤに話しかければ案の定嫌そーな顔をされた。
こんなの慣れっこだから、どうって事ないけど。
「名前って、俺のこと好きだと思う?」
「………は?」
振り向いてもくれなかったトキヤがシャーペンを走らすのを止め“何を言ってるんだコイツは”的な表情をしながら振り返るもんだから、間抜けな声、とからかうように笑った。
「いきなり変なことを言うあなたが悪いんです。」
「ごめんごめん、でも本気で質問してるんだなー、困ったことに。」
ホント参るよ、そう呟き、俯いた。
そんな俺の様子を見てかトキヤは溜息をつく
「…浮気でもされたんですか?」
「そんなわけないじゃん。名前がそんなことする奴じゃないってわかってるでしょ?」
トキヤの冗談だと分かっていても、少しムキになってしまう。そういうところが子供なんだろうな、と苦笑した。
「正直浮気なんかより質悪いよ。」
「は?」
「ないんだよね、特に理由が。でもなんとなく片思いな気がしてさ。」
最近名前と喋っていると俺の気持ちばっかり空回りしてる気がして、何とも言えない気分になる。
「友達関係の時のが楽しかったよ、まだ。」
「……それが原因なんじゃないですか?」
トキヤの発言に、え?と声を漏らす
「意識しすぎて、余計なことまで考えすぎて、面倒臭いと感じるようになったんじゃないかと、私は思います。」
「え?なになにどういうこと?」
トキヤは真剣に話すけど、言葉の意味が分からなかった。
「要するに、音也が思ってるほど好かれてないわけじゃないって事です。」
前向きな性格だけが取り柄なのに、ネガティブになってどうするんですか、そう言ってトキヤはまた机に身体をむき直した
だけは余計だよ、だけは。
「やーっぱ恋愛は難しいよ。」
でも、トキヤの言葉のおかげで少し元気になれた気がした。
「ありがとう、トキヤ。」
今日の夜、彼女に電話しよう。
そう心に決めて、大好きな歌を歌った。
例えば君が、
(俺を好きじゃなくても、俺はきっと永遠に彼女の事が好きなんだろう。)