Pathetic Melody
□05
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頻繁に降る雨とじめじめした空気。
どうも、この季節は好きになれない。
「ただいまー…、」
大雨の中、学校から少し離れた寮につきビチョビチョになったローファーと靴下を脱いでため息混じりにそう言ってみても返事はなく。
部屋を見回してみてもこの空間にいるのは私だけ。
どうやら、同室のトモちゃんはまだ帰ってはいないみたいだ。
普段は私より早く寮についているが、なにかあったのだろうか。
そんな不安を抱き玄関に戻ってみてもトモちゃんの傘はそこにはなく、傘を忘れたわけではないのかと少し安心した。
…まぁ、まだ遅い時間でもないし。学園内でなにかあるなんて事も無いだろうし。
テストも決まったばかりだ。
ペアの相手と話し合いでもしているのかも。
その内帰ってくるか、そう呟いて私は濡れてベタつく制服を脱ぎ乾燥機にかけ、部屋着に着替えた。
ついでに濡れて帰ってくるであろうトモちゃんのためにお風呂も沸かして、少し勉強しようとイスについてみる。…が、やけに、落ち着かない。
…今日は良くないことばかりだった。
音也と七海さんを見るし、一ノ瀬さんとは、…ペアだし。
加えてこんな雨の日ともなれば、気分は2倍も3倍も落ちてしまう。
『オレは、名前と一緒に卒業オーディション合格するよ。』
早乙女学園の合格が決まったとき、
クラスは違うのに“一緒に”って音也は言ってくれた。
それが、今じゃなんだ、…こんなのってある?
早乙女学園に入学して2ヶ月。
普通ならもう慣れる頃だけど、私は未だにこの生活に慣れる事が出来ない。
今までずっと一緒にいた音也が離れたからか、少し前までとは全く違うことをやっているからかは分からないけど
音也とまた普通に喋ることが出来るようになれば、私はまた変われるのだろうか。
普通に普通の話がしたい。
少し前までは、そんな事考えたこともなかったのに。
…最近はネガティブになりすぎだ、これじゃ、トモちゃんにも来栖君にもまた迷惑かけることになってしまう。
落ち込んでいた考えを振り払うように本棚に整理されてある教本を適当に取り出し今度こそ、と勉強を始めようとするが、ノートを開く前に聞こえたのはトントン、という扉を軽くノックする音だった
「…トモちゃん?」
鍵忘れたのかな、なんて疑問を抱きながらも私は立ち上がり、玄関に向かう。
…あぁ、そういえば、ローファーも乾かさないと。
だから雨の日は嫌なんだ。
そう思いながらドアを開けると少しの隙間から見えた金髪にトモちゃんではないとすぐにわかった、
「はい……って、」
「よお、…いきなりごめん、今大丈夫?」
ドアの先にいたのは上から下までびしょ濡れになった来栖君。
私が「どうしたの?」と問いかければ来栖君は少し迷ったように目を泳がせている。
「…。取り敢えずあがってよ、まだ、トモちゃんも帰ってないし」
「えっ、あ、いい!いい!すぐ済む話だから…、」
「そんな濡れてるのに玄関先でってわけにもいかないでしょ、」
「自分の部屋で拭くから!」
まじでいいって、なんて騒ぐ来栖君の腕を掴んで、わたしは半ば強引に部屋に入れた。