Pathetic Melody
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最近、とてつもなく不思議に思うことがある。
自分でも理解しきれない、不思議なことが。
廊下に貼り付けてあるながーい紙。
ただの紙じゃない、これはこないだのテスト結果表だ。
…じゃ、なくて。
「うわ、すげーなお前!また1位かよ。」
「あー、うん、頑張ったかな、」
「いやいや、皆がんばってんだろ。」
「来栖君も、いいじゃん。」
「…馬鹿にされてる気しかしねぇよ。」
来栖翔君。
同い年で、同じクラスで、音也の仲の良い彼はわたしのSクラスでの、唯一の友達。
…普通に、褒めたんだけどね。
来栖君は7位だ、充分スゴい。
すごい、けど、負けず嫌いな彼からしたらどうにもやるせない順位なのだろう。
って、違う違う、それもそうだけどそうじゃない。
「…来栖君、怒らないの?」
次はどうするかなー、なんて、既に次のテストの事を考えている来栖君に私は呟くように、そう聞いた。
こんなこと聞くの、よくないってわかってる。
来栖君はきっともっと私が彼のことを馬鹿にしてると思うだろう。
…だけどもう、聞かずにはいられなかったのだ。
「はぁ?なにいってんの、お前。」
「えっ、あ、いや…その、」
怪訝そうな表情をする、来栖君。
怒るのはわかってた。
だけどいざそういう状況になる言葉が出ない。
私から質問しといて、…ホント、勝手だと、思うけど。
来栖君は、呆れたように溜息をつくと「あのなぁ、」とこれまた呆れたように口を開いた
「別に俺はここにきた理由なんかどうでも良いんだよ、俺みたいに純粋にアイドルになりたい奴もいりゃ、お前みたいな特殊な理由の奴もいるだろ。」
どっちにしたってライバルにはかわりねーんだ。
そう言いきった来栖君に思わず数回、瞬き。
すごい、来栖君に、こんな考え出来るんだ、尊敬、素直にカッコいいと、思う。
…や、馬鹿にしてるわけじゃなく、本気で。
本気、なんだけど、確かに来栖君の言うとおりなんだけど…私の言いたいことは、ちがくて。
「来栖君は、なんで?」
「は?」
「なんで、アイドルになりたいの?」
「…だから俺は日向先生に憧れて…、」
「…そ、だよね。」
やっぱり、それなりの理由があるわけだ。
私とは違う、ちゃんとした理由。
…今更、ホントに今更だけど、私は何故ここにいるのかわからない。
音也に誘われた、寂しいと言われた、その言葉を本気にして本当に毎日カラオケに行って、昔習っていたヴァイオリンの練習も、何年ぶりかに本気でやった。
興味の無かった音楽の勉強だって、いっぱいいっぱいした。
…それでも、少しだけ、ほんの少しだけ期待はしていたけど、学園長との面接のとき私は受からないと確信したのだ。
なのに。
「…なんで、合格したのかな、」
がんばった、のは事実。
だけど、…本気で、アイドルを目指してないのも、事実。
わからない、私なんかが受かった理由。
すると来栖君は、悲しそうに私に目を向けた。
「だから、理由なんてどうだっていいんだって。実際お前頑張ってんじゃん、このテストも、歌だって。…でも、」
さすがに今のは、俺らにも落ちたヤツにも失礼だ。
困ったように、そういった来栖君に私は思わず焦る
なにいってんの、最悪だ、私。
…こんなの、ダメに決まってる。自分がうまく行ってないからって…!
「っ、ご、ごめん、」
「や、俺も複雑なんだよ、お前の理由知ってるから尚更な?本気で目指してりゃいーのにっていつでも思うし!」
「…うん、」
「順位は、お前が頑張った証だろ、…俺なんか寧ろお前のおかげで勉強、頑張れてるしさ。」
来栖君は、優しい。
それに、私よりずっとずっと大人だ。
だから相談できたのかもしれない。
来栖君に、ああ言ってほしくて、…今のことも、音也のことも。
「にしても、俺ももっとがんばんなきゃな、いっとくけど目標は苗字名前以上だから!」
ビシッと指をさして宣言する来栖君に、笑みがこぼれた。
優しい、だから、頼りすぎちゃいけない
迷惑かけちゃ、いけない。
「じゃあ、次のテストもっとがんばらなきゃ」
「おう!手加減すんなよ!絶対1位とって…」
しないよ、そんなことを言って笑っていると、来栖君は私を見て、固まった