Pathetic Melody
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「本当に良いの?」
「まずその質問がおかしい」
そんなことないと思うけど、なんて首を傾げる名前に苦笑する。
『外暗いし、送ってくよ』
渋谷がいつ帰ってくるかもわかんねーし、迷惑になるからそろそろ帰ると言った俺に名前がかけたのはそんな言葉で、コイツは本当にバカなんじゃないかと本気で思った
暗かったら尚更ダメだろ。
でも、このバカは少し感覚がズレてるせいか譲ろうとはしない。
「でも男子寮遠いし」
「アホか、そのあとのこと考えろよ」
そっちの方が心配で逆に迷惑。そうわざと名前の嫌いなワードを出せばようやく頷いて、小さく息をつく。
「…じゃ、また明日。」
言葉に出すと少し名残惜しくなるのは何故だろうか。
俺は名前の数少ない“友達”の中の1人だけど、俺にはある程度そういう存在がいるしコイツに向けられる周りからの目もあるから、少し気を使って学校でもずっと喋っていたい気持ちを抑えている…つもり。
だからこんな風に沢山話せる機会はないわけで、それが例え音也の話でも、ただ単純に嬉しかったのだ。
明日からまた、そう思うと、寂しい。
「ありがと、来栖君。」
「なに言ってんだよ、俺が勝手にやってるだけじゃん」
「……本当にありがとう。」
呟くようにそう言った名前に、少し悲しくなった。
そんな顔、させたいわけじゃない。
笑ってほしいのに、音也にしか出来ないことなのだろうか?
…結局なんも、変わってねーじゃん
「…じゃ、な。」
今度こそ、そう言って借りた傘を片手に軽く手を振ると、名前も気をつけて、なんて同じように振ってくれた。