小説

□忍び寄る潮時 〜知られたくない想いの続き〜
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手術室の扉の前、意識朦朧としたシカマルはベンチに座り俯いている。そこに綱手が到着した。綱手とシズネもシカマルの姿をみて息をのんだ。






綱手「シカマル!!何があったんだ!!」




綱手が駆け寄る。ここでもシカマルの足下には血溜まりが出来ていた。




綱手「お前!!大怪我してるじゃないか!?」




綱手がシカマルの腕を掴む。するとシカマルの忍服からは、まるでぞうきんを絞ったかのように血がぼたぼたと落ちて来た。




シズネ「シカマル君!!早く治療を!!」



すると手術室の扉が開き医療班の一人が





医療班「火影様!!!早くこちらに!!シカマルは大丈夫です!!急いで下さい」





綱手はまだ状況を飲み込めないまま部屋へ入って行く、閉じかける扉の隙間から綱手の悲痛の声が聞こえた。。。。






シカマル「。。。。。。。。」





それから数分後、ゆかと同じ血液型の忍びが数人やってくる。皆シカマルに目を向けるが、ただならぬ様子に無言で部屋へ入って行く。





サクラ「師匠!!今から輸血開始します!!」





綱手「分かった!!そっちは頼む!!」




皆が神経を張り巡らせゆかを助けようと必死だ。






綱手「イノ、チョウジ、何があったんだ。ゆかがこんな事になるなんて。。。。。相当な手練だったのか??」





治療を続けながら綱手は問いかけた。




サクラ「シカマルもあんなに取り乱して。。。。。。」




するとチョウジはこれまでの事を、事細かく皆に説明した。






綱手「。。。。。。。。そうか。。。。。そんな事があったのか。。。。。」




綱手は悲し気にゆかを見つめる







サクラ「。。。。私。。。。シカマルにひどい事言っちゃったわ。。。。。。」






イノ「それに。。。。。チョウジ。。。。最後のあれ。。。。見た??」








チョウジ「う、うん。。。。。。見たよ。。。。。」





するとイノとチョウジは急に涙を流し始めた。





綱手「どうしたんだ。。。。何を見たって言うんだ?」




イノ「あ、あの。。。。。。最後。。。。ゆかが倒れる直前。。。。。シカマルに。。。キ。。。キスしようとしてました。。。。」






チョウジ「うん。。。最後の力振り絞って。。。。」




綱手は心がキュッと痛くなる。




綱手「。。。。。それで。。。。シカマルはちゃんとキスしてやったのか?」






イノ「いえ。。。。。シカマルはもう呆然としてて、震えちゃってて。。。。もう少しの所でゆかは。。。。。うっ!!」






チョウジ「倒れたんだよね。。。。。」





そのエピソードは、この部屋に居た全ての忍びの涙を誘った。。。。。





綱手「それじゃあゆかは死ぬに死ねないな!!皆何が何でもゆかは助けるぞ!!!」



綱手は皆の不安を取り除くため、笑顔で言った




皆「はいっ!!!!!」






一方シカマルはー






相変わらず俯いたまま、自分の体から滴り落ちるゆかの血を見つめていた。すると聞き慣れた声が聞こえた






シカク「シカマル!!!」





シカマルは父の声にピクリと反応した。そして顔をゆっくりそちらに向けた。






シカク「。。。。。。おい。。。。お前。。。。。どうしたんだ??怪我。。。してるのか???」





状況を知らないシカクはやはりその姿を見て、シカマル自身が怪我をしているのかと勘違いした。





シカマル「。。。。。っがうんだ。。。。。」




シカマルはまた俯くと声を詰まらせながらシカクに言った。





シカマル「オヤジ。。。。違うんだ。。。。。これはっ。。。。。全部。。。。あいつのっ。。。。。。ゆかの血なんだ。。。。」





シカク「なんだとっ!?」




シカマル「お。。。。俺のせいで。。。。あいつは。。。。。っく。。。。」




肩を震わせるシカマルに




シカク「とりあえず俺は火影様に頼まれてる薬を渡してくる。。。。。」




そう言って部屋に入って行く。シカクは今手術室で繰り広げられている光景を目の当たりにして、悪い予感しか頭をかすめなかった。。。。。。






チョウジはシカクにも何があったのかを話してやった。シカクは黙ったまま部屋を出ると、うなだれたままのシカマルに





シカク「シカマル。。。。。大変だったな。。。。。」






シカマル「。。。。。。。」






シカク「とりあえずお前は一旦家へ帰るんだ。。。。。そのナリをなんとかしてこい。。。。。。」





シカマルは顔を横に振る





シカク「気持ちは分かるがよ。。。。。そのまんまじゃあゆかが目を覚ましたときビックリするだろ?」




そう言ってシカマルを立たせた。





シカク「俺も用事済ませたらすぐに家に戻るからよ。。。。。」




シカマルの背中をポンと押すと、そのままフラフラと歩き始めた。




家までの道のり、皆がシカマルを振り返る。しかしシカマルにはしそんな事どうでもいい。ただ自分の力の無さに絶望していた。





家に着くと誰もいない。。。。。シカマルは靴を脱ぐとそのまま風呂場へと向かう。そして服を来たままシャワーを頭から浴びる。
排水溝に流れて行く真っ赤な水に、シカマルは膝から崩れ落ちると、大声で泣き叫んだ。




シカマル「くっ。。。。。!!俺のせいだ。。。。。。何もかもっ!!誰か。。。。。助けてくれ。。。。。」





後から帰って来たシカクは泣き崩れる息子を、ただただ見守るしか無かった。。。。。。。。しばらくすると少し落ち着いたシカマルが風呂場から出てくる。






シカク「よぉ。。。。。落ち着いたか?」




シカマル「。。。。。。ああ。。。。今から病院。。。。行ってくる」





そう言うとシカマルはまたフラフラと出て行く。








再び手術室の前にあるベンチに座る。血は誰かが奇麗に拭き取ってくれていた。





それから十時間はそこに居ただろう。。。。手術室の明かりがフッと消える。シカマルは勢いよく立ち上がった。扉を食い入るように見つめる。






シカマル「。。。。。。。」






すると扉が開く。綱手が先頭をきってこちらに向かう。シカマルは後ろに目をやると、移動式のベッドに乗せられたゆかがガラガラと運ばれてくる。







シカマル「五代目様っ!!!」




不安で一杯の表情をしたシカマルに、綱手は微笑んだ。






綱手「ゆかは。。。。。悪運の強いヤツだ笑」




シカマルの不安が溶けて行く。。。。。





綱手「しばらくは集中治療室だが、もう大丈夫だ!!」





シカマルは深々と頭を下げて






シカマル「ありがとうございます。。。。。!!!」





そう言った。





ゆかはそのまま集中治療室に運ばれて行く。中からはイノ、サクラも出て来た。





イノ「シカマル。。。。。!!助かったよ。。。。。」




イノはシカマルにしがみつき、声を荒げて泣きじゃくった。。。。。。その光景をサクラはじっと見つめ






サクラ「シカマル。。。。。何の事情も知らないのにひどい事言ってごめんね。。。。。」





イノをなだめるシカマルはサクラに目を向けると




シカマル「いや。。。。。お前の言う通りだ。。。。あいつを助けてくれて。。。。。本当にありがとう。。。。。」




シカマルの目にも涙がにじんでいた。






綱手「シカマル。。。。。お前に今から任務を言い渡す」




そこに居る人間全員が驚いた





サクラ「し、師匠。。。いくら何でも。。。。この状態で任務だなんて。。。。」





シカマル「いや。。。。。大丈夫です。。。」




イノ「で。。。でも。。。。。」





すると綱手はニヤリと笑うと






綱手「ではお前には、今からゆかが目を覚ますまで、そばに居てやる。。。。という任務をやってもらう」




皆の表情が明るくなる。もちろんシカマルも





シカマル「。。。本当に。。。ありがとうございます。あいつが目を覚ますまで。。。。。ずっと側にいてやります。。。。。。」





綱手「頼んだぞ」





綱手はそう言って、今夜は飲むぞと息巻いて帰って行った。
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