小説
□隠したかった過去 〜お前はズレてる〜の続き
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目を反らせないでいるシカマルの前で、キバはゆかに唇を重ねようとしていた。。。。。
シカマルは一気に心臓を誰かに掴まれたように、息が出来なくなった。
シカマル(やめろ。。。。)
今にも駆け出してしまいそうになる。しかしキバは、途中で軌道を変えて、おでこにキスをした。。。。。。
そして切な気に微笑むと、ゆかを揺り起こした。
一部始終を見ていたシカマルは、次の瞬間なぜか隠れてしまう。
シカマル(なんで俺が隠れてんだよ!!くそっ!!)
何とも言えない苛立ちの中、シカマルはゆかとキバがその場を立ち去るのを、見送った。。。。。
シカマル(なんなんだ!?どうかしてんじゃねえか。。。。これじゃ、まるで。。。。。)
シカマルはこの先を考えないように、自分に言い聞かせ、重い足取りで帰って行った。
翌日ー
ゆかは火影室にいた。。。。。
綱手とシズネは険しい表情をしている。
その二人の目の前にたたずむゆかは、驚きと、困惑と、苦しみの表情。。。。
綱手「ゆか、すまないな。。。。。」
綱手の言葉にゆかはちゃんと返事が出来ないまま、部屋をあとにした。。。。
その前から相変わらずの緩い笑顔で
カカシ「よっ!」
でも今日は無理に笑顔が作れなかった。。。。
カカシ「あれ。。。。?今度こそ何かあった?」
ゆかの顔を覗き込む。
ゆか「いえ。。。。たいした事じゃないです。。。本当に。。。。」
明らかにいつもと違うゆかにカカシは
カカシ「俺は興味本位で聞きたいわけじゃないから、言いたくなければ何も聞かないよ。」
また笑ってくれる。。。。
ゆか「ありがとうございます。。。。。」
それが精一杯。。。。カカシはそれを察してゆかの頭を一撫でしてから立ち去った。
その後もゆかは足取り重く、家路に着く。誰もいない部屋に戻り、シャワーを浴びて、ビールを流し込む。。。。今夜はどんなに飲んでも酔えない。
ゆか「なんでこうなってしまうんだろ。。。。。」
悲しく呟くと、押し入れの奥にしまってある大きな箱を取り出した。その中の一枚の写真を見つめる。。。
ゆか「父さん、母さん。。。。スイ。。。。私、どうしたらいいの??」
その写真をぐっと胸に押しあてて、小さな肩を振るわせた。
翌朝ー
知らない間に眠ってしまっていたゆか。時計を見ると、慌てて身支度を始めた。
昨夜に取り出した箱の中から服を取り出し、鏡の前で着替えた。
そして両頬をパチンとたたくと
ゆか「よし!!!行くぞ!!」
そう言って綱手の元に向かった。
その頃火影室ではー
綱手「では、お前達にはこれから新しい任務に就いてもらう」
この任務はかなりのリスクがある事を、重々説明した。
その言葉を、小隊長であるシカマルは真剣に、粛々と聞いている。
そして綱手の説明が終わると
シカマル「分かりました。。。。今回の任務はかなりやっかいですね。。。ま、でも、俺たち三人でなんとかこなしてみせます」
そういうシカマルに綱手は
綱手「いや、今回の任務はどうしても4マンセルで行ってもらわなければならない。。。。」
チョウジ「え?でも。。。今はほとんどの忍びが里を離れているんですよね?」
イノ「そうですよ。。。。これ以上里から人を出してしまうのは危険じゃないですか?」
シカマル「火影様。。。。アスマがいなくなってから、俺たち三人でなんとかやって来たんです。だから、今回も三人で大丈夫っすよ。。。。」
シカマルは正直今回の任務は、4マンセルで行きたいとは思ったが、里の状況を思うとそうは言えずにいた。
すると綱手はシズネに
綱手「まだ来ないのか?」
シズネ「そろそろ来る時間ですが。。。。」
シズネは何か不安気で、落ち着かない様子。
シカマル「誰か来るんすか??」
綱手「。。。。。。ああ、この任務に入るヤツだ」
シカマル「えっ?もう一人入れてくれるんすか?」
小隊長として、ほっとするシカマル。すると
コンコンー
ノックがした
綱手「入れ」
ドアを開けて入って来る人影に、三人は言葉を失う。。。。。。。
木の葉の額あてをしているその人物は、違う里の物と思われる忍服に身をまとい、見た事の無い忍具を装備していた。
イノ「ゆか。。。。。。!!!」
そこにやって来た人物は、他でもないゆかだった。
ゆか「まさか。。。。私が配属される小隊って。。。。??」
ゆかは信じられない表情で綱手を見た。綱手は苦渋の表情をしながらも
綱手「そうだ。。。。ゆか、お前には今からシカマルの隊に入ってもらう」
ゆかはその場から一歩も前に進めない。
イノ、チョウジも驚きの表情でこちらを見ている。でも。。。。ゆかはシカマルを見る事が出来ない。
沈黙の中、チョウジが口を開いた
チョウジ「ちょ、ちょっと待って下さいよ。。。。なんでゆかが任務に来るんですか??」
その勢いに乗ってイノも話しだす
イノ「そ、そうですよ。。。。いくら人員不足だからといって、ゆかを任務に出すなんて、危険過ぎます!!」
シカマルはまだ何も言わない
シズネ「み、みんな。。。。気持ちは分かるわ。。。。でも、ゆかは月の里では正式な忍びだったのよ。。。。。」
またもや三人は驚きを隠せない。ゆかも俯いたまま何も言えないでいる。
イノ「ゆか。。。。。。あんた忍者なの??」
チョウジ「ビックリだよ。。。。そんな事一言も言わないからさ。。。。」
そんななか綱手は皆に促すように言った
綱手「ゆかは。。。。『元』忍びだ。。。。。5年前に忍びから足を洗ってる。。。。
それを今回どうしてもと頼んで、任務についてもらう事になったんだ。。。。」
ゆかは皆に目を合わせられないまま頷いた。
イノ「なんだ〜、それじゃあ今回の任務4マンセルで余裕じゃない??まあ、ゆかはドジだから心配だけど〜笑」
チョウジ「はは。そこは皆でフォローすればいいじゃない。ね?シカマル!」
チョウジがそう言った瞬間
シカマル「ふざけないで下さいよ!」
綱手に食ってかかる。
綱手はシカマルの言葉を、冷静に静かに聞いた。そしてシカマルの怒りの矛先はゆかに向いた。
シカマル「つうかあんた。。。。俺達の事、騙してたのかよ。。。。」
ゆかは俯いたままピクリとした。
ゆか「だ、騙すなんて。。。。」
ゆかの言葉を遮って
シカマル「は?今更奇麗事とか止めろよな笑。あんた、何も分からない振りして、全部しってたんだろ?!」
シカマルは自分を止められなくなっていた。こんなに自分を好きだと言っていたゆかが、自分に隠し事をしていた事
聞いても無い事だから、知らなくて当然なのに、なぜだか全身が熱くなって、怒りを抑えられなかった。
さらに俯くゆかに
シカマル「前に俺の術の事、きいてきたよな?!」
(おい、俺、何言ってんだよ!!こんな事言いたいわけじゃねぇのに!)
ゆかは黙ったままだ。
シカマル「本当はスパイじゃねぇのかよ!!大体何のために木の葉に来たんだ?!よっぽどの理由が無いと自分の里、離れねぇよな?」
(まて、何ペラペラ喋ってんだよ!!止まれ!!止めろ!!)
シカマル「何が『元』忍びだよ。中途半端な気持ちで忍びになって、中途半端な気持ちで忍び止めちまうなんて、そんなヤツ、俺の小隊に入って欲しくないね」
(俺は馬鹿か?これ以上言うな!!)
綱手はじっとシカマルを見つめる。シズネも。。。。。
シカマル「そもそも何処のウマの骨だかわかんねえやつに。。。。。。
(だれかとめてくれ!!)
チョウジ「シカマル!!!!!!!」
シカマルを止めたのはチョウジ。チョウジはきつくシカマルの肩をつかんだ。
チョウジ「シカマル。。。。言い過ぎだよ。。。。」
珍しく怒りを露にするチョウジ。そして
イノ「そうよ。。。。シカマル、どうかしてるわよ。。。。。」
悲し気なイノ。
やっと止めてくれたチョウジにすまないと呟いたシカマルは、次の瞬間ゆかを泣かせてしまたと思うと、ゆかの方を見れないでいた。
しかし、恐る恐る振り向いてゆかを見ると、ゆかは泣くでも無く、怒るでも無く、悔しがるでも無く。。。。
ただただ、まるで叱られた子供のような、悲し気な顔で一点を見つめていた。
その表情を見たシカマルは、自分の吐き出した言葉の重さを知り、苦しくなった。。。。。
そして溜め息を付いた綱手は
綱手「シカマル。。。。。言いたい事はそれだけか?」
鋭いまなざしでシカマルを見る。
シカマルは黙りこくってしまった。
綱手「ゆか、お前には何が何でもこの任務には入ってもらう。1時間後に門の前で待機しろ!わかったな!?分かったなら下がれ!」
綱手にそう言われると、ゆかは小さくはいと答えて、部屋を出た。