小説

□夢のような一夜 〜かわいい人の続き〜
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翌朝ー


ゆかはいつもより少し早起きをした。昨日のとんだハッピーを思い出しつつ、ニヤニヤととんだ間抜け顏で自分用のお弁当を作る。


今日からは八百屋での仕事。食事処とは違い賄いは出ないからだ。


ゆか「出来た!!昨日はビール飲んだらそのまま寝ちゃってたから、お昼はしっかり食べないとね〜」



入れ物に入りきらなかったおにぎりを手に持って、ルンルンと鼻歌まじりに玄関を出る。


少し歩いた所で、ゆかの背後に大きな影が出来、振り返ると巨大な生き物に肘のところまで噛み付かれた。



ゆか「きゃっ。。。。。」


よくよく見ると、赤丸が自分の持っていたおにぎりを食べている。噛み付かれたのではなく、勢いで腕が口の奥まで入ってしまったようだ。



ゆか「赤丸〜〜〜、びっくりしたよぉ。」



赤丸はしっぽを振ってゆかにじゃれ付く。そのすぐ後ろからキバが追いついて来た。



キバ「おい、赤丸!お前勝手に居なくなんなよ!!」


かなり走ったのか、肩で息をしている。


ゆか「キバおはよう。散歩??」


赤丸を優しくなでながら微笑むゆかに、キバは少し赤くなりながら


キバ「あ、ああ、いや、、、今日はこれから任務なんだ。」


ゆか「そうなんだ。私もこれから仕事〜。こんな天気のいい日はのんびりしたいけどね笑」


キバ「そうだな。。。。」


二人で空を見上げる。そして赤丸がキバに何か話しているようだ。


キバ「なにっ??赤丸本当か?!」

少し怒っているキバに、赤丸はシュンとして小さくなってる。


ゆか「ど、どうしたの??なんで怒ってるの??」


キバ「すまねぇ、赤丸がお前のおにぎり食っちまったみたいで」

申し訳なさそうに言う。赤丸も謝っているようだ。


ゆか「や、やだ!!そんな事??全っ然気にしないで!!むしろ女子が食べ歩きするのを未然に防いでくれたよ笑」


そう言ってまた赤丸をなでる。

その光景がキバの鼓動をどんどん早くさせる。本人はとっくに気づいている。
この間河原でばったり出会った時から、キバはゆかに恋をしている。



キバ「じゃ、この借りは必ず返すから」


ゆか「そんなたいそうに考えないで。借りだなんて。。。。笑」


キバ「いや、そう言う訳にはいかねぇ。。。。一週間程任務でここにはいねぇから、帰って来たら甘いものでもごちそうするぜ」



ゆか「そ、そんなに言うなら。。。。ごちそうになろうかな??私図々しいから断らないよ?笑?」


キバ「じゃあ、決まりだ!!」


そう言ってキバは赤丸と一緒に駆け出す。ゆかは大きく手を振って見送った。



ゆか「キバってワイルドかと思ったら、結構気にしいなんだ笑。」




一方キバは、赤丸を思いっきりなで回し


キバ「赤丸!!!お前でかしたぞ!!!」


ゆかと次に会う約束をゲットしたからだ。赤丸は何の事かさっぱり分からない様子だが。。。。


里の商店街ー


ゆか「今日から宜しくお願いします」


今日から二週間、お世話になる八百屋。といっても、夏みかんの収穫の手伝いとの掛け持ちなので、お昼過ぎまでこの八百屋で働く。


おじさん「じゃあゆかちゃん、この段ボールに入ってるトマトをそのかごに並べてくれるかな??」


ゆか「はい」


笑顔で答える。


おじさん「いや〜、やっぱ若い女の子が居ると、店に花があるね〜」


腕を組んで、しみじみとおじさんは言う。



ゆか「そうですか〜?そんな事言われたら張り切っちゃうじゃないですか〜笑」


そんな飲み屋の客と、おネエちゃんのような会話をしていると,店の奥から一人の青年が出て来た。



おじさん「お、帰って来てたのか?ゆかちゃん、紹介するよ。こいつは息子のリョウだ」


そう言って背中を軽く押した。



ゆか「こんにちは。今日からお手伝いさせていただきますゆかと言います」


ゆかがお辞儀すると、その青年はなんともさわやかな笑顔で


リョウ「こちらこそよろしく、そんなに難しい事は無いから、気楽にやってよ」


そう言って、段ボールの中の野菜を並べ始めた。



リョウはゆかの二つ年上で、この八百屋の二代目として頑張っているようだ。



ゆか「リョウさんはずっとこの仕事を??」


ゆかは手を休める事無く話しかける。


リョウ「いや、少し前まで作る方を勉強するために、農家にホームステイしてたんだよ。
そこで色んな野菜や果物を作ったり、改良の研究に加わってたんだ」



ゆか「へー。。。。改良の研究って大変そうですね」


リョウ「はは。。。失敗の連続で何度もめげそうになったけど、この店を継ぐって決めた時から
自分の納得したものを、里の皆に食べてもらいたいって想いがあったからね、なんとかやってこれたよ笑」



その屈託のない少年のような笑顔に、この人は心が満たされて、幸せいっぱいなんだと思った。


そんな志し高いリョウに、ゆかは元気をもらった気がした。



リョウ「そろそろお昼の買い物に、お客が来るよ。ほとんどが主婦だからほんと気楽にね笑」



ゆかに微笑みかけるリョウの笑顔は、なんだか神がかっているように眩しくて、思わず目を細めた。



ゆか(さ、爽やかすぎる。。。。)


ふと、仏頂面の誰かさんを思い出してクスクス笑ってしまった。


そして昼前には商店街は賑わって来た。このお店はかなり繁盛している。

その原因はー



おばちゃんA「リョウちゃん!今日も来たわよ!何がおすすめ?」


おばちゃんB「リョウくん!こっちも!」



手伝おうと接客に入るゆかだが


おばちゃんC「あ、いいのいいの私にかまわいで。ねえねえ、リョウちゃんこれはいくら?」



かなりの賑わいに反して、ゆかの周りだけゆっくりな時間が流れている。



ゆか「。。。。」
(おばちゃん達、リョウさんに会いに来てるんだね。。。。。私サボってるみたいになってるし笑)



リョウは慣れた感じで一人こなしてゆく。なんとも楽しそうに働くリョウを、ゆかはしばらく眺めていた。


一通りピークが過ぎ、ゆかはほとんど出番のないまま次 の仕事へ向かう事になった。



リョウ「ゆかちゃんお疲れ。今日はありがとうね」


何にも役に立っていない自分に、お礼を言われて恥ずかしくなった。


ゆか「いえ、、、、ホント私何にも出来なくて。むしろ明日から来て良いのかと。。。///」


恐縮するゆかにリョウは優しく、
もちろんだよと言ってくれた。


ゆか「じゃ、じゃあ、明日は必ずリベンジ誓います!!」


そう言って荷物を持ち、立ち去ろうとした時


リョウ「今から配達あるから、途中まで一緒に行こう」


リョウは野菜を荷台に乗せて歩き出した。


道中ー


ゆか「お客さん、みんなリョウさんのファンみたいですね!なんかアイドルみたいでしたよ笑」


リョウ「はは。。。。そんなんじゃないよ。ただ子供の頃からの常連さんが多いからね」


そう謙遜するリョウは、きっと女性なら恋してしまいそうな整った奇麗な顔。
少しくせ毛っぽい柔らかそうな髪は、男の色気を感じさせる。


ゆか「やっぱり生まれ育った場所で、家族や仲間や素敵な仕事に恵まれてるって、幸せな事ですよね」


ゆかが他の里から来た事は、火影から聞かされている。



リョウ「僕はそれだけが必ずしも幸せだとは思わないな。新しい場所で、新しい家族や仲間を作って
自分の力を生かせる仕事を探す。。。。そんな人生も幸せだと思うよ」



本当にありきたりな台詞だが、今のゆかには魔法の言葉のように響いた。



ゆか「あ、ありがとうございます。。。。リョウさんって、人を元気にする力を持ってますね」


リョウ「そ、そうかな??なんか分かった風な事言っちゃったけど////。。。
それと、リョウさんってなんか照れるから、リョウでいいよ。」



ゆかはわかったと答えた。
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