短編

□連れてって
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空っぽのこの部屋を覗くのはもう何度目か。この間までこの部屋でクッションを抱えてふよふよ浮いていたあの心優しい少年は聖騎士を裏切り「七つの大罪」側についたそうだ。

「七つの大罪」というのは世にも恐ろしい7人の大罪人で構成された最強の騎士団だったらしい。私なんかが子供の頃はいい子にしないと「七つの大罪」が来ると脅されたものだった。例えば目が合うと石にされちゃうとか、子供の心臓をえぐり出して食べちゃうとか、剣や槍で滅多刺しにされちゃうとか。そんな彼らは十年前、王国転覆を謀り聖騎士長様を殺して何処かに行方を眩ませたらしい。

13歳になり、侍女として聖騎士様に雇われた。そしてここで少年の姿の彼と出会った。

彼は姿形は私と同い年かそこらに見えるけど、本当は何百年も生きる妖精族の王様なんだと教えてもらった。そしてあの「七つの大罪」のメンバーだったと。

数百年も生きているので彼はいろいろなことを知っていて、私にたくさんのことを教えてくれた。私が先程言ったような「七つの大罪」の話をすると、彼は笑いながら本当の「七つの大罪」の話をしてくれた。そして、少しだけ悲しい顔をした。「どうしてそんなに悲しい顔をするのですか?」と聞くと彼は少し笑って昔の仲間と喧嘩をしてしまったんだと言った。今彼が聖騎士に味方しているのはきっとそれが関係しているのだろうと思ったけれど、何も言わないでおいた。

彼とのお話は楽しかった。仕事の合間に話していたのがついつい時間を忘れてしまってよく先輩に怒られた。聖騎士様は「バロットはキングのお気に入りだな。」と笑って仰った。その頃には幼い私にも恋心のようなものが芽生えていた。




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