彼は私を愛していない

□脱出
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ギルサンダー様がお戻りになられたのはその翌日の事だった。直接会って伺ったわけではなく、伝え聞いた情報と手紙からだ。

結局あの後一通り感謝を書き綴り、別の便箋に身の安否を伺う言葉を並べた。母が尋ねて来たことを書こうか迷ったが、変に墓穴を掘りたくなくて触れずにおいた。すると夜眠る前に手紙が届いた。大事ないというお返事と、身体を気遣う言葉が走り書きで書き留めてあった。だが、この手紙は事件の発端や背景について一度も触れられる事はなかった。

それから、あの3人が毎日のようにというかおそらく3時間にいっぺんは来るようになった。無事かどうかの情報をくれたのも彼女達だったが流石にちょっと頻繁すぎるんじゃなかろうか。あと帰る時常に、ちゃんと寝ててくださいねとか、安静にしててくださいと言われるのがなんかちょっと不満。だから、普通に動けるんだってば!!




勘違いされやすいけどもともと私はそこまで大人しいっていうわけじゃない、ただ人見知りするだけで。箱入りといえば箱入りだけど、そんな深窓のご令嬢タイプでは無い。まぁ言葉の意味的には同じなんだけど、響き的に。そんなわけで部屋の中で何日もじっとしてるだけっていうのは流石にストレスが溜まる。お散歩したい、どっか行きたい。しかも先の事件のなんやかやで軽く疑心暗鬼で神経が切れそう。心が癒しを欲する程度に荒んでいる。何かこう、気分転換できるような癒しが欲しい。例えばそう、一人で遠くに出掛けたい。思えば婚約してからというもの、あまりまともに外に出てなかったような気がする。敷地内をお散歩なんていうのは結構あったけどそれより外には出ていない。




何が言いたいかというと、つまり何処かに出掛けたいのだ。さらにいうとちょっと遠いような場所に行きたい。













そこで唐突ですが、私は侍女の服をかってに拝借して街にお忍びで出掛けることにしました。そして今、絶賛実行中です。



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