彼は私を愛していない

□箱入り娘
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理由といえば、ただちょうど良かったというだけで深い意味はなかった。




最近やたらしつこくハウザーに絡まれ、その度に「お前彼女いねーの?」と聞かれる。どうやら交際を断られたらしい。この有事の際に馬鹿馬鹿しいとは思ったが、先日冗談交じりにドレファス聖騎士長にも似たような事を聞かれてしまった。確かに考えてみれば年齢もそれなりで、最近その手の話が入ってきているのも確たる事実。このまま何も手を打たずにいればいずれ縁談などが本格的に持ち上がるだろう。それをいちいち断るのも面倒だ。よって、それらを防ぐための手頃な理由が必要だったのだ。

彼女を選んだのは、歳も同じで家もそれなり、親同士の繋がりもそこそこだったからだ。何よりバーミリア家は宮廷魔導師の家だ。聖戦とその混乱において抑えておいても損にはならないだろう。

そんな理由で、婚約を申し出ることに決めた。



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