彼は私を愛していない
□崩壊
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危ないところだった。もう少し彼女が来るのが遅ければ、彼女達が気づかなければ、危うく取り残すところだった。
あの後部下全員に指示を出し、すぐ避難しようと思っていたところで1人の侍女が泣きながら走り寄ってきた。
「助けてください!!バロット様を助けてください!!」
急いで行ってみると、倒れているバロットの傍らにもう2人の侍女がいた。止血をしたり名前を呼んだりしているが一向に反応する気配がない。
「っ血が、頭から血が、とっ、止まらなっ・・・」
こめかみを布で押さえている侍女が震えながら言った。瓦礫が当たったのだろうか。頭はもともと少しの傷でも相当の量の出血をする。しかもこめかみには動脈が流れているはずだ。
侍女の持っていた布を取り、こめかみに当て、バロットの付けていた髪紐を解き、頭に巻きつけ縛った。侍女3人を説得し先に逃げさせ、自分もバロットの頭をなるべく動かさないように抱えその場を離れた。
外に避難し、すぐに医者に見せる。こめかみ以外にも、手足に数カ所の打撲と傷が見つかったらしいが、大事には至らないそうだ。彼女の実家には先程文を飛ばした。