彼は私を愛していない

□崩壊
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先日、ギルサンダー様はバーニャという村に出掛けてらした。その前日に手紙を出し、当日の朝お返事が来て、帰ってらした頃を見計らってまた手紙を出した。同じ所に住んでいるというのにまどろっこしい事この上無いが、毎回間隔はまちまちでも必ずお返事が来るのが何だか嬉しくてこの不思議な文通は続いている。文通と言ってもそんな長いお手紙は書けないし向こうもお忙しいだろうから二言三言の簡単な物だ。これならお手間は取らせないし、書くことに悩むこともない、ついでに続けやすい。

そうして、お帰りになられた頃に出した手紙のお返事が今さっき届いた。届けてくれたのは以前一緒にお茶をした侍女の子達3人で目一杯からかわれた。私付きのいつもの子はというと今は実家に報告に帰らせていていない。昨日の朝出て行ったから明日ごろには帰って来るだろう。

手紙には先の手紙のお礼とバーニャの村の事が少し書かれていた。私は知らなかったのだがバーニャという村はエールで有名らしい。が、そのエールがあまり口に合わなかったと書いてある。あと、小さい子供に何か悪戯されたと書かれていた。想像するとなんか微笑ましい。早速お返事を書こうと便箋を取り出そうとした。



ドッ、ドドドドドドドドドド



すごい音と揺れ、そして建物がどんどん崩れていった。

驚いて立ち上がり、一応最低限の貴重品とコートを持って廊下に出た。が、ここは比較的塔の上のあたり。逃げるには階段をずーっと降りていかなくてはならない。廊下もどんどん崩れている、おそらくこの様子だと階段も無事ではあるまい。急がないと確実に逃げ遅れ、取り残される事になるかもしれない。早く行かなくちゃ。

そう思ったところで頭に衝撃が走り、意識が飛んだ。





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