ネタ帳


◆一人称視点 [追記]

2日ぶりに家に行くと、家主はリビングのソファで丸まって寝ていた。何も掛けず制服のまま転がっているところを見るに、何とか学校は行ったもののそれで気力を使い果たしたといった所だろう。
覗き込むと少し顔色が悪い。常日頃から自身の体調不良の責任を低気圧に丸投げしているが、今日ばかりはそれも間違いじゃないのだろう。
タオルケットを掛けて、シャツのボタンを外してやろうとしたところで我に返る。確かに少し前までルームシェア染みたことはしていたが仮にも異性だ。不用意にそういったところに手を出すのは如何なものだろうかと伸ばし掛けた手が宙で止まる。
「……いや、別に下心があるわけじゃ無い」
誰に対する言い訳か分からない言葉を呟いてから、そのままシャツのボタン2つほどを外す。首元が詰まっていては寝づらいだろうという、ただの配慮だ。
そして露わになった胸元を見てまた思考が停止する。
「……なんでこんなもんつけてんだこいつ……」
シンプルな指輪がチェーンを通されてそこにあった。いつしか知り合いに礼代わりとして押し付けられたが、自分が持ってても仕方ないとこいつに渡したのを今思い出した。渡した本人が忘れていたようなものをわざわざ隠してまで身につけようとするあたり、どうにもこいつの行動原理はよくわからない。
それを見ている内に妙な好奇心が湧き上がってくる。肌に触れないように気を付けながらチェーンの留め具を外し、投げ出されている手を掴む。左から順にはめていくと、3本目で指の根本までリングが通った。良し悪しなど気にせず半ば押し付けたようなものだったが、不思議と目の前の少女に良く似合っている気がした。
「……何やってんだか」
抜き取ったチェーンをテーブルに置いて、タオルケットを肩まで上げておく。なんともなしにため息をついて、本来の目的を果たしにキッチンへ。今回は何が作れるだろうか。買い物自体は彼女がしているため食材の予想がつかないのが難点だなと思いながら、馴れた動作で冷蔵庫を開けた。

<ゲーム関連> 2023/06/02(Fri) 23:55

[戻る]
[TOPへ]
[カスタマイズ]



©フォレストページ