ネタ帳


◆ぺるせてんせいもの [追記]

「ん、」
指に当たった金地に紫糸のお守りは、昨夜暇と霊力を持て余して衝動的に作ったものだ。部屋の机に置いてきたと思っていたが、何かの拍子に鞄に入り込んでいたらしい。作ったものの自分に効果は無いし、とはいえ仕舞い込むには些か手の込んだものを作った為気が進まない。どうしようかなぁと思いながら雑にポケットにしまい込んだ。

「何してんだお前は」
「優しいクラスメイトに助けられてる」
「シバくぞ」
数時間後の放課後。本屋寄って帰ろうと街に繰り出したのが運の付き。表通りの人通りも多いところだというのに謎の絡まれ方をされた。私も遠くから来てるので……。電車通学なんでこの辺詳しくないんです……。いや本当に……。そう言ってもしつこく食い下がってくる相手に辟易していると、通りすがりの心優しいクラスメイトが助けてくれた。
このクラスメイトは根本がオカン系だが如何せんでかくてごつくて言葉がぶっきらぼうな為遠巻きにされがちな男である。幸い(この男からすると不幸かも知れないが)元審神者という立場上でかいのもごついのも無愛想なのもオカン系なのも慣れっこである故、気圧されることなく普通に話す仲である。それこそ相手が学校に来なくなって、裏路地にたむろするようになっても変わらず。
「まさかこんなところで絡まれるとは思わなかった」
「今のは絡まれるというより……いや、いい」
物言いたげな顔をしながらも話を切り上げる姿には覚えがある。兼さんや南泉によくされたやつだ。しかし問い詰めても口を割らないのは経験則で知っている。ここはぬるっと話題を変えるのが得策だろう。
「……あ、そうだ。ちょっと待って、お礼。今仕上げるから」
昼休みにポケットに入れた物の存在を思い出し、邪魔にならない端に座り込む。持ち歩き用の裁縫セットを取り出し、お守りに名入れをする。律儀に待ってくれている彼は隣に座り、私の手元を覗き込む。
「器用なもんだな」
「いや私びっくりするくらい不器用だよ。これは只の努力の結果」
軽く話している間にさくさくと仕上げていく。すごい。荒垣真次郎って大倶利伽羅だの山姥切長義だのより余程楽。お守りのど真ん中に名前を入れると、当の本人は微妙な顔をしていた。気持ちは分かるが名入れは大事だぞ。
「おらっ持ってけ!」
完成したお守りを投げるように押し付けた。ずっと具合悪そうだし、まぁ気休めくらいにはなるだろう。少しでも良い方向に向かってくれるといいが。

<ゲーム関連> 2023/05/09(Tue) 20:41

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