支部ログ

□【第3話】
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*13*


「みっやじサーン」

そう言って抱きつきに行くのも日課。

「うっせーよ、抱きつくんじゃねぇ、轢くぞ?」

そう言って宮地サンが引き剥がすのも日課。

「高尾、いい加減学んだらどうなのだよ」

眼鏡をクイッと上げながら真ちゃんが俺にそう言ってくるのも日課。
毎日毎日繰り返して飽き飽きするはずなのに、ちゃーんと付き合ってくれる宮地サンと真ちゃん、それから大坪さんや木村さんが口出しせずに見守ってくれるのも全部ぜーんぶ大好きなんすよ?
勿論、一番はもう一回抱きつきに行こうと思っているあの人っすけど。


「宮地サンひどーい、和成君泣いちゃうゾ」
「きめぇ」
「いやー、だからって頭グリグリやめてくださいって!マジ痛いんすよ!」
「知ってる」

もう、鬼畜っすね!この人は!好きだけど!好きなんだけど!
まぁ俺たちは今から朝練もあるし、離れる。
毎日朝から練習に励むのが秀徳!なんっつーてな☆
どこもやってるのは知ってるし、それでどれだけ結果が出るかは本人次第。
宮地サンはそれが3年になって出たんだし、俺は真ちゃんの相棒として頑張って今がある。
勿論眼のこともあるけどな。
だからこそ、俺は練習を馬鹿にしたくないし、練習を馬鹿にしておろそかにするやつが許せないんだ(青い髪のやつとか紫の髪の巨人とか諦めた馬鹿どもとかな!)。
それでいくと、真ちゃんは毎日人事を尽くしているし、大坪さんも木村さんも人事を尽くしている。
あったりまえのように宮地サンも。

それなら、俺は?
俺は皆のように人事が尽くせているのだろうか。
尽くそうと努力はしている。
でも、それで?


真ちゃんのようにシューターとして打てるわけでもない。
木村さんや大坪さんのようにチーム全体を見て、1人1人気遣ってやれるわけでもない。
宮地サンのように、
厳しい言葉をかけながら皆の強さを俺は認めることなんて出来ない。
誰かの強さに嫉妬して、認めることが出来ない俺はいったい何なのだろう。



そう、彼らじゃない人に聞いたとき。


「え?和は鷹の眼もあって、そして秀徳を代表するPGでしょ?それを掴み取るだけに自分より上の人を越してやろうって思ったんでしょ?俺みたいな『鷲の目』を持っている相手でも。それなら、既にちゃんと認めているよ」


「地味に和君は面倒だね。認めているのを認めようとしていないんだから。それなら、僕はどうなるの?僕は『天帝の眼』を持っているんだよ?十分僕のほうが強いでしょ?ってごめんね、えらそうなこと言っちゃって…」


と眼関係の人たちや


「俺は平凡なのに和は平凡じゃない、なんて言うのと一緒だよ。自分は思っていなくても相手は思っているってこと。あ、だからって、平凡じゃないって言うつもりは微塵もないから」

と言う自称平凡魔王様や

「和ちゃんは強いよ?他の人が嫉妬するくらい強いよ?俺だって嫉妬しちゃうよ、和ちゃんみたいな眼があればスティール100%なんて余裕なんだし。でも、和ちゃんがそう思うのならもっとここにいる人たちから盗めばいい。和ちゃんはここにいる人たちは認めているって俺知ってるもん!」

無冠の悪童兼天使や

「えー、和君強いやん、ワシそんな強さないしなぁ…大体嫉妬して何が悪いんかイマイチわからんねんけど」

「あー、お前にはお前の実力あるんだしさ。それに俺たちだってお前のこと認めているし、そっちは俺たちを認めてる」

「少なくとも俺たち先輩はそう思ってるけどね〜ん」

「俺の言葉ない!まぁ同じこと思ってっからな」


と3年生の言葉もあって、俺はなんとなくだけどあいつらの前では納得した。





それでも、秀徳は?
秀徳だったら俺はどうなるのだろう。
そんなこと考えても時間の無駄、とあいつらは言っていた。
眼でも元々の実力でも関係ない。努力で決まる。
じゃないと誠凛があそこまでくることはなかったとか。

確かになぁ、と思いながら。
俺はモヤモヤしたまま、朝練を終える。
あ、集中しなくちゃダメだったのになぁ。
はは、俺の馬鹿。

すると居るのはさっき離れたばっかの宮地サンたちではありませんか!
まぁ抱きつきにいくのは片付け終わってからだけど。
最近は真ちゃんもちゃんと片付けやるようになって、他のメンバーと話すようにもなったから安心。
「これで俺も必要ないね!」とつい言ってしまったら、「馬鹿め、お前は俺の相棒だろう?」とデレを炸裂させるもんだから感動した。
落ちねぇけどな!

片付けも終わらせて抱きつきにいくとかわされて、真ちゃんを撫でに行く宮地サン。
なんで?俺は邪魔?
ねぇ、俺って本当はイライラして嫌な奴だったんですか?宮地サン。

「高尾?お疲れ様」
「大分上達したな、その調子で頑張れよ」

そう言う木村さんと大坪さんは優しい。
それでも、俺は、どうしようもなくて得意のHSのごとき笑顔の仮面を被って先輩と離れようとする。

「ありがとうございます!あ、俺先教室行きますね!」

そこから駆け出すように俺は逃げた。
部室で驚くような速さで着替えて、教室に行く。
ごめんなさい、ごめんなさい!
もう俺はどうしようもなく逃げた。


宮地サンが俺以外に笑顔を見せているとこなんて見たくない!
あぁ、宮地サンは俺みたいな面倒な奴嫌いだろうなぁ…はは。
なぁんだ、俺はさ、宮地サンとくっつく相棒の姿が思い浮かんじゃって何も集中できない。
真ちゃんが好きなんじゃねぇのかな、宮地サンって。

「あーあ、失恋かよ…」

誰にも聞こえないようにボソッと呟く。
そして少し思ってから、モヤモヤを消す為にしようとすること。
大丈夫、後で癒されにあの家へ、彼らに会いに行けばいいだけなんだから。

「玉砕決行!」

俺は今日の昼休みに早速言うことにした。
ただ、癒されたいので隆さんと幸さんと翔さんと俊さんとマコさんにメールする。
ずいぶん勝手なメッセージ。
送り終わると宮地サンにも昼休み時間ください、なんて送る。
そうこうしてると真ちゃんがやってくる。
はは、俺うまく笑えるかな?でもまぁそれも今日だけだから笑えてなかったら許してね、真ちゃん。








「で?時間ください、なんてどうしたんだよ、高尾」

時間は過ぎて昼休み。
心配そうな感じだけど言動はいつも通りです。さっすが宮地サン!


「えーとですね…」
「なんだよ?もったいぶらずに言えよ」


そういう宮地サンはもう俺の前に姿を現さないよなぁ…。
だって、気持ち悪いだろうし。
だからこそ、玉砕で。


「宮地サンが…好きです」
「は…」
「でも、宮地サン他に好きな人いるっしょ?だから玉砕と一緒にこれから会わないって言いに来ました。本当にありがとうございました!そ、それじゃあ!」

俺はすぐに逃げ出した。
だから、もう、関係ない。


関係ないから。


宮地サンがあせったように、でも悲しそうな顔していたって関係なんて無いから!
俺はただ静かに暗い校舎裏で泣いた。




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