支部ログ

□神様からのプレゼント
2ページ/2ページ



俺こと宮地清志は困惑している。
こんなことをさせるのは基本一人しかいない。
それもいつもなら流せそうな事態ではあるが、今日という今日は流したくも無い。
11月21日。
年に一度だけの最初に神様から与えられた記念日。
そんな記念日にこんな事態を起こすなど誰が考えただろうか。





「なんで…」

秀徳のバスケ部メンバーはバスケットボールを取り落とすほど、キャプテンの大坪から言われた言葉に呆然とした。

「なんで、こんな日に限って」
「「「あの馬鹿は風邪をひくんだよー!!」」」





*今日記念日で祝われるはずだった子は風邪で休みです☆*






「お、俺さぁ、今までの感謝をこめて今日という日に賭けていたのに…」
「なんで、高尾が来ねぇんだよ…」
「今日頑張って俺みんなで食べる為にケーキ作ってきたんだぜ!…主役来ない…」
「「「まさかの手作り」」」

後輩たちの言葉を聞いているだけでどれだけあいつが慕われているかよくわかる。
てかケーキ手作りとかすげぇな、俺にもくれ。

「くっ…高尾がいないとは…」
「あ、緑間」

緑間はあいつの相棒だ。今日緑間も祝いたかったのだろう。

「高尾がいなければ、学校であいつが祝われて恥ずかしい感じの写真も撮れないのだよ…」
「そうだな…」
「それにせっかく宮地さんと高尾の絡みで3作ぐらい書けそうだったのに…」
「そう…ん?」

何か緑間の視点がおかしい。
そして何故半分ぐらいのやつらが頷いているんだ。
というかなぜあんなに緑間が喋れているんだ。
どこいったコミュ障。

「みーくん、どんな作品を書こうとしていましたか?」
「それはだな…まずは当然のように生クリームプレイなのだよ」
「な、なんだと…緑間……宮地先輩が勿論受けなんだろうな?」
「何言っているの!高尾君が受けに決まっているでしょう!このアホ!」
「あぁ?よろしいならば戦争だ」
「リアルで言うやつがいたとは。でも同意見だよ!戦争だぁぁ!!」

おいおい、なんていう争いしてんだ。このくそ。
なんで1軍メンバーが色々争い始めてんだよ!地味に女子もまざんな!
あいつで色々考えてんじゃねぇよ。

「ちなみに先輩はタチ?ネコ?」
「言うわけねぇだろ、轢くぞ」
「お」

あ。
あいつと付き合ってんの公表していないこと忘れていたじゃねぇか!

「まぁバレバレだったのだよ」
「隠そうとしていた俺たちの気持ちを返せよ!」

本気で沈みそうなときに必ず襲い掛かってくるやつが腐っているやつというもので。

「宮高か〜?高宮か〜?」
「どっちもおいしい」
「萌え補給できるなぁ〜」

偏見持たれないのはいいけどよ!
なんで、逆に乗り気になるんだ!

「せんせー、宮地のライフがもう0でーす」
「とりあえず朝練終わりだから教室行こうか」
朝練っていう朝練してねぇけどな!








当然授業もあるし、部活もある。
お見舞い行きたい気持ちもあったが、それが出来るわけも無く。
俺には『努力』することしかチームの力になれることはないから。
そしてシュートを打つ。
ガコンッ
外れる。またイライラして仕方が無い。

「チッ」
「舌打ちは良くないのだよ」

いきなり緑間が現れる。
今日は良く喋るな。

「それより、宮地さん。そろそろ高尾のところに行ってください」
「はぁ?」
「風邪のときが一番あいつが弱っているのだよ」
「いや、知らねぇよ」
「やはり、恋人である宮地さんが看病にいくべきなのだよ」

俺をなんとかして高尾のところに行かせようとする緑間。
まぁ、あれだろ。

「お前らの言う『萌え』が欲しいんだろ」
「そ、ソンナコトハナイノダヨ」
「おい、片言。視線までそれてんぞ」

とりあえず緑間はわかりやすい。
新たな発見かもしれない。
もうすぐ引退なのに知れるとはな。

「おーい、宮地!今日は帰れ」
「は?大坪何言っちゃってんの?」

いきなり不可思議なこと言われたんですけどー。
何?なんなの?お前等俺をそんなにあいつの家に行かせたいの?

「おーそれじゃあ、俺らが高尾にあげるやつ全部持っていってくれねぇか?」
「お前もか、木村ァ!」

俺に味方はいなかったらしい。

「とりあえず、頼むな。宮地。明日の朝練は無しだから」

そうですか!病人に手出せるわけねぇのわかってて面白がっているだろ!
緑間も何メンバーとお喋りしちゃってんの?
あいつが喜ぶよ!良かったな!もう訳が分からないよ!
宮地清志はこんらんしている!











とりあえずあいつの家に着いて、なんとチャイムを鳴らそうとした瞬間に妹ちゃんの和菜ちゃんに出会ったから、すんなりと家に入れたわけです。えぇ。
このやたらと重い荷物さえ無ければな。

「これ全部お兄ちゃんのプレゼントですかー。それじゃあ、お兄ちゃんは上のお部屋で寝ているので行ってきてください。あ、ケーキはおいしゅうございました、とお伝えください♡」
「おーわかったわー」

ほんと、仲良くなりすぎて本当の家族みたいな感じだ。
すごく落ち着いて心地よい。

「さぁてと」

あいつのドアの前に立つ。
ドアの向こうにはあいつがいて、寝ているのか、ただぼぉっと天井をみているのかは知らないが。
やっと会える。
何故だかそう気持ちが高ぶった。


トントンッ



ドアを叩く。

「はーい、どうぞー」
「これが不審者だったらどうしてんだよ、まったく」

ドアを開けて第一声がそれ。
正直俺も無いな、とは思うけれど、これはいつもだから、つい。

「あ、清志さん。今部活中でしょ?どうしたの?」

こいつは、和はいつもと違って元気が無い。
仕方ないか。風邪だから。

「見舞いだよ、緑間も含め全員一致で行って来いだったからな」
「ははっ、やべー、真ちゃんデレた感じですか?」
「そうだな」
「あはは、真ちゃん大丈夫かな?」

…気に喰わない。なんで緑間なのか?
勿論、俺がそう話題を振ったからだ。知っている。
それでも、
俺の前で、他のやつの、他の男の話で笑わないで。

「…清志さん?」
「……あ、わりぃ…」

心配そうな和。
こんな顔させるためにここに来たわけじゃないのに。

「あ、そうそう、和が今日休むから俺がここに全部持ってきた。ほんとお前は他の部員から愛されているな」

あぁ、また俺はつまらない話題を振ってしまう。
馬鹿だ、本当に。

「え?そんなこと無いですよー!」

わざと笑わせようとして、楽しい話題を振ろうとして。
これじゃあ、気が滅入るだけじゃないか。
あぁ、ほんと俺は馬鹿。

「…ねぇ?清志さん……」
「どうした?」
「俺に遠慮しないで」

その言葉にドキリとする。

「遠慮なんて…してねぇだろ…」

きっと嘘。
俺は和の言っていることは当たっているって知っている。
間違って何かを言うことなんてほとんど無いのだから。

「してますよ。真ちゃんの話題を振ったときも、先輩たちの話題を振ったときも。でもね、俺は」



「清志さんでいっぱいにしてください。俺の心全部。風邪で弱っている俺につけこんでみてくださいよ。それとも、無理ですか?」


その言葉で俺は和を抱きしめた。
そして、今までの話題はこいつの嫉妬心を出させるのと
俺が和を壊してしまわないようにやっていたのかも。
でも、もう。

「なら、その言葉通り実行しちゃっていいわけ?和君?」
「あは、やっといつもの清志さんだ」

嬉しそうに、本当に嬉しそうにする和。
俺が見たかった笑顔はこれで、俺がこの笑顔で、体温で癒されたかったのだと今更ながら気付く。

「ねぇ、清志さん。俺へのプレゼントは?」
「あるけどな」

すごく独占欲が強くて、俺の象徴だと言うものが。
俺は和の左の手をとりながら、ゆっくりと薬指に嵌める。

「あ…」
「いつもはチェーンに付けて持っておけ」
「俺なんかでいいんですか?」

そんな言葉を言う和の唇に右手の人差し指をあてる。

「馬鹿、俺はおまえがいいの。他の誰でもない、高尾和成を」
「あはは…清志さん、俺…嬉しすぎて、幸せすぎて」

和は涙を流しながら満面の笑みを浮かべる。

「和、誕生日おめでとう、そして、俺とずっと一緒にいて?」
「…そんなの勿論です!本当に大好き!」

また抱きしめあう。
大好きな恋人と。
俺のほうが誕生日プレゼントを貰った気分だ。

「ねぇ、清志さん。俺が清志さんと出会えたことはきっと神様からのプレゼントですよね。今日俺がこうやって会って、話して、抱きしめあうなんて清志さんとだけしかしていないんだから!」

涙まみれの笑顔でそう言う和につられて笑う。

「そうだな」

宮地清志はすっごく幸せだ!





















今日は年に一度だけの最初に神様から与えられた記念日。
そして16歳になったこの日、
神様は一人の少年に最高のプレゼントを与えました。
これからもずっと笑いあって幸せになるプレゼント。





Happy Birthday !!



.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ