支部ログ

□1人にしか宛てていない手紙
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大嫌いな先輩へ




こんな書き出しですみません。

大嫌いなものは大嫌いですし。

手紙で書いているんですから少しは多めにみてください。

な?腹黒妖怪サトリ眼鏡の先輩様。



あ、まぁ言いたいことはたくさんありますね。

こんな敬語使うのも面倒だからやめるから。

これに関しても俺にグチグチ言うなよ。



そんだな、別に先輩に手紙を出すのに理由はいらねぇだろ?

だから、チームメイトでもなく、無冠のやつらでもなく、先輩に出すことにする。

なぜかはしんねぇよ。

書きたくなったから書いているだけだしな。




中学のときに見たときは怖かったわ。

糸目のそれも胡散臭い笑顔浮かべられたらそりゃ後輩引くだろ。

でも、尊敬しているやつは多かったな。

不思議なくらい。

まぁそれが先輩のいいとこなんだろうな。

俺には決して思われることの無かったものを先輩が手にしていた。

羨ましかったよ。

すっげぇださい本音だ。

だからかもしれない。

俺はラフプレーで天才を倒そうとした。

怪我させればどんな天才もガラクタだから。

でも、中学のときはそれで孤立した。

ただ『無冠』の名前が付いただけだ。

先輩が引退してからの話になるな。

先輩が引退する前はアンタがいたから。

何か勝てる気がしていた。

でも帝光中のキセキには勝てなかった。

きっと先輩のやっていたやり方は間違いじゃない。

ただ敵が強すぎただけ。

でも、俺は「勝てない」ってわかった途端不思議と「壊せばいい」って思ってしまった。

先輩は肯定しなかったけれど、否定もしなかった。

他は否定ばっかりだったのにさ。

それになぜか安堵している自分がいたんだ。

だからかもな、

俺が霧崎第一に進んで今のチームメイトとラフプレーをしていたのは。

否定してほしかったわけじゃない。

誰かに認められたかったんだ。

ただそれが『悪童』として広まったのかもしれない。

わからないけれど。

俺は『悪童』って言われて不幸って思わなかった。

認められて良かったって思ったんだ。

おかしいだろ?馬鹿みたいだろ?

この気持ちはチームメイトも知らない。

『無冠』っていう称号は嫌いだけど『悪童』は嫌いじゃない。

そんなこともあいつらは知らない。

今、ここで、先輩だけが知っていること。

何で書きたかったのか分からなかったけれどこの気持ちの整理をしてやっと分かった。





長々と書いてきたけれど、

俺はアンタのことが先輩のことが


好きだ


って今やっと気づけた。

そしてごめんなさい。

先輩の答えは聞けないけれど、

この告白は忘れてくれ。

幸せになってください。




もう、何も思うことはない。

たった一つあるとすれば、

もう一度先輩に会いたかったことぐらいかもしれない。

それでも、俺はきっと先輩に会ってもこのことは正直に言えないだろうから。


さようなら。

そしてありがとう。

俺の先輩でいてくれて。











大嫌いで愛している先輩へ



         花宮 真





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