短編の図書館

□水の戯れ
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クジラとシャチ





真琴中1 大地高1

 あれは初めての鮫柄の文化祭の日―…

「駄目だ…、凄い脱ぎたい…「「駄目だ!」」」
 俺の呟きは空しく先輩達に、消された。もう、凄い悲しい…。なんでメイド服…。

「周防灘…、なんつー可愛いんだよ!」
「俺…、眼科行っていいかな…」
「せ…先輩…っ、俺は男ですっ!」
 駄目だ…3年と2年の先輩も同学年(亮ちゃん以外)も全然、話聞いてくんねぇ…。

「大ちゃん…、ドンマイ」
「亮ちゃぁん…、もうヤダ…」
 俺は亮ちゃんに泣き付いた。磯波のお姉様方の餌食にされたくない…。だってお姉様方の目、キラキラ輝いてるし…。

「あ、大地兄さん」
「蒼空、ハル達は?」
 今日は真琴もハルも、来るって聞いたのに…(ユリちゃんは磯波に行ってるアイツに会いに行ったんだっけ?此所にいないってことは…)

「あー…、実は真琴…、磯波のお姉様方に捕まっちゃったの…」
「やっぱり…そうかと思った。俺、迎えに行ってくるわ」
「おー、行ってらー」
 亮ちゃんと蒼空に見送られて、俺は真琴を迎えに行った。

「あ、いた。真琴ー」
「あ…っ、大地さん…っ!」
 真琴は走って勢いよく、俺に抱き付いた。メイド服だから余計に、動き辛い…。

「あら、周防灘くん」
「どうも、ウチの幼馴染みがお世話になりました」
 あ、なんだ磯波の部長さんと話してたのか…。大人数で襲撃されたと思った…。

「いいのよ、私が一方的に話してたようなものだし…もしかして、それ…」
「あ…、部長には俺とは会ったって言っといてください。あの人、生徒会本部に連絡しそうなんで…」
「わかったわ。じゃあ、またね。周防灘くん、真琴くん」
「はい、さようなら」
 俺は部長さんと別れると、真琴の手を引いてベンチへと向かった。

「真琴?」
「‥‥‥」
 真琴はだんまりと、俺の服を握っていた。
一体、どうしたんだ…。

「もしかして、拗ねてんのか?」
「だって、大地さんが…他の人から綺麗って言われるのが嫌だったんです…っ!」
「…っ!」
「だから…僕を嫌いになって欲しくないで…っ」
 泣きじゃくりながら真琴が言い切る前に、俺は真琴の唇を塞いだ。

「っは…、大地さん…///」
「俺は真琴が嫉妬してくれて、嬉しかった」
「大地さん…、ふぇ…っ」
「あぁー、泣くな。よしよし」
 泣きじゃくる真琴をあやしながら、俺は真琴を抱き締めた。

 4年後―…
「懐かしいなぁー…」
「え、何がですか?大地さん」
「ん〜?真琴の初めての嫉妬」
 俺はニタァーと笑いながら背後から真琴を抱き締めると、真琴はリンゴのように顔を真っ赤にさせた。

「え…っ?まだ、覚えてたんですか…っ?//」
「たりめぇーよ。忘れる訳ねぇだろ」
「ふぇ…っ?!///ん…っ//」
 真琴は肩を揺らした瞬間に、唇を塞いだ。

「まだまだ、シャチっ子だな。真琴」
「…大地さんの意地悪…」
 ムスーと頬を膨らます真琴を抱き締めながら、俺は苦笑した。

END

大地を褒める人に嫉妬する真琴
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