ぐるり、ぐるり

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「いやあ、なかなか面白い茶番でしたよぉ!」



拍手と一緒に響き渡る声。それらは反響し、音の主がどこにいるのか分からない。



「何…?誰!どこにいるの!」

「隠れてないで出てこい!」

「ベタな台詞ありがとうございますぅ。」



あ、こいつ嫌な奴だわ。絶対性格悪い。



「何なんだ一体…。無視して行こうぜメイね…ぐっ!」

「ど、どうしたのアカル!」



眉を寄せ、足首を押さえ込むように丸くなったアカル。―荒い息遣いに険しい表情。ああ、アカルはあたしを庇ったために、あたしが負う筈だった傷を余計に負ってしまったんだ。



「アカル…。」



なんて情けない姉なんだあたしは。こんなとき、傷を治す魔法でも使うことができたら…。無力な自分に嫌気がさし、無意識に地面の土に爪をたてていた。



「こんくらい大丈夫だって…。それより、はやく帰らないと日が暮れるぜ。」

「…わかった、はい。」

「…いや、なんで俺に背を向けてしゃがみこんだの。」

「おぶるからよ。」

「いやいやいやいや、おかしいだろ!」

「いいから、はやくお乗り。今ならタダだから。」

「メイ姉が俺担いでいける訳ないだろ!」

「大丈夫。」

「どこからそんな自信が出てくるんだよ!…俺のことはいいからさ…。」



―置いていけって言うの。そんなこと、できるわけないじゃない。
そう続けようとした。しかし、これ以上喋ったら声が震えてしまいそうで、…泣いてしまいそうで、喉まできていた言葉を呑み込んだ。
アカルもきっと、痛みを我慢して言葉を紡いでいるのだろう。何故わかるかって?いつもよりツッコミのキレが悪いからだ。普段のアカルはもっと―…



「お互い強がりなんですねぇ。もっと素直に生きましょうよぉ。」



嫌味な口調。それはまさしく先程聞こえた謎の声だったのだが、トンネルの中のように響いていた声は、すぐ上から聞こえたような気がした。…誰かが近づいてきた気配はしなかったのに。

俯いていた顔をあげた。スーツ。真っ黒な、スーツだ。視界に入ったのは、ピシッとしたスーツに包み込まれた足。そのままゆっくりと、更に顔をあげた。



「どうも、お助けしましょうかぁ?」



小首を傾げ、右手を差し出してきたのは、



「…う、」

「はい?」

「兎だあああああああああああああ!!」



―真っ白なお顔の兎でした。
いや、正確には兎の頭の被り物をしたスーツを着ている男だ。…うん、自分でも何言ってるんだろう。見間違いかと何度も男の顔を見た。だが、幾ら見ても兎だ。兎。
男のすらりとした体型に、ちょこんとのっているファンシーな兎の顔が逆に不気味で、もうどこからどうツッコめばいいのかわからない。

―あ、森の妖精さんかしら。





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