ぐるり、ぐるり

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ここは、魔法が盛んに溢れている国―フェアツァオ。四季豊かな活気ある国である。
魔法の操り方や種類は人それぞれで、様々な魔法が日々とびかっている。

―これは、そんな世界のある双子が奇妙な出会いをするお話。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「…うん。これは完っ璧に迷ったわね、アカル。」

「『探検しようそうしよう、お姉様についてきな!』とか言ったのは誰だよ!馬鹿メイ姉!」



―あたしたちは今、町外れの大きな森にて迷子になっている。春の麗らかな日には探検したくなるよね!ということでやってきたのだが、地図は読み間違える謎の生物に追われる謎の生物に非常食をとられる魔法道具は全て落とす、と非常に困った状況になってしまったのだ。さすがあたしたち。ただの探検では終わらない。



「んんん?姉に向かって馬鹿とは聞き捨てならないわね。」

「なんだよ、いい加減自分のドジさを自覚し、」

「必殺・姉の威厳パンチ!!」

「痛い!!」



理不尽だ、とあたしのパンチを受けた頬を押さえながら嘆いているのは、双子の弟―アカル。



「あ、ごめん。やり過ぎた…ってきゃあ!」

「うええ!?ちょっ…!」



つい力を入れすぎてしまったことを詫びようと、アカルの頬に手を伸ばした。すると、足元から注意が離れてしまったあたしは、何かにつまづきバランスを崩した。咄嗟に、伸ばしていた手でアカルの服の裾を掴む。はい。ここからは言わずもがなお決まりの展開。



「いやあああああああ!!」

「ぎゃあああああああ!!」



アカルまでバランスを崩し、そのまま地面に倒れた―なんて生ぬるい。倒れた先は急斜面で。

ゴロゴロと、なす術もなく転がるあたしたち。
ああ…齢16にしてもう人生の幕を閉じるのか…。巻き込んでごめんねアカル。本当に申し訳ない。今度限定15食のワッフル買ってあげるね…。って死んだらワッフルなんて買えないわ。…あの世でも売ってるといいな、ワッフル。



くだらない考えを最後に、意識を失いかけた直前。急斜面はそこで終わりだったようで、平地に投げ出された。全身が痛む。



「う…。ア、アカル!アカ…。」



ぎゅっと瞑っていた瞼を開くと、そこにはアカルの顔が。…まさか。過った考えを確かめようと視線を落とした。やはり、そうだ。
アカルは、あたしを庇うように抱きしめていたのだ。



「…っ、アカル!起きて!」



なんでこいつは格好いいことするかなあ!巻き込んでしまったあたしが悪いのに。
アカルは目を覚まさず、ぴくりとも動かない。…こうなったら!



「あ!あそこにいるのは伝説の魔法騎士、」

「シックザール!!」



がばっと力強く起き上がったアカル。



「いやいやメイ姉。シックザールはもう死んでるから、こんなところにいる訳…え!?まさか俺たち死…!?」

「違うわよ、ちゃんとあたしたちは生きてる。」

「あぁぁ良かったぁぁ。メイ姉どこか痛いところは…ないわけないか。」

「ううん、どこも痛くない。」

「…え、」

「どこも、痛くないよ。」



―そう言うと、アカルは優しく微笑み頭を撫でてきた。
姉の頭を撫でるなんて、生意気な弟だ。ばか、と一言言ってやろうと口を動かした。しかし、どこからか響いた拍手の音が、あたしの声をかきけした。





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