長編

□共存の先にあるもの4
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この人なら俺を助けてくれる。
確証はない。でも自信はある。

だから、自分のことを話そうと思った。


「俺の父さん、…あの化け物の抗体を作っていたんだ」
「……」
「火不火、だっけ?」


母さんが化け物に殺されて父さんは悲しむよりも先に、何を思ったのか研究してそれに対する抗体を完成させた。何年も何年もかけて出来たソレを俺に使ったのは親心からなのか、ただの実験体だったのか、今となっては確認は出来ないけど。


「そいつらに目を付けられた父さんは殺されたよ。でも研究材料は一つ残さず処分していたから俺が抗体を持っていることはまだ知られてないはず」
「…捕まっていたのは偶然か?」
「たぶん、…自分の中に抗体があるのに気づいたのも捕まってるときだったし」


当時俺が狙われていなかったのは父さんの傍にいなかったことが一番の理由だ。既に祖父母に引き取られていたし子供は眼中になかったんだろう。
でもきっともう知られているはず。俺が普通じゃないことを。
そうしたら俺は邪魔者扱いで殺しにくるだろう。


「輪って火不火を倒すんだろ!俺も協力する。だから俺のこと守って」
「協力ということは、自ら危険に飛び込むことになるぞ」
「だから、あんたに直接言ってんじゃん。強いんでしょ」


助けてくれたとき、直感だけど強いと思った。
手を差し伸べてくれて、嬉しくも思った。
この人なら…。


「なら、この話は燭さんにも話しておけ」
「え、…」
「あの人もお前の協力を望んでいる。特に抗体について調べたいと言っていた」
「それは協力になる?」
「もちろんだ」
「…わかった」


協力できるなら惜しまない。
きっとこれは俺の運命なんだ。正義感に燃えているわけじゃないけど、俺にしか出来ないことが目の前にあるなら無視はしない。


「燭さんを呼んでくる。俺はそのまま仕事に戻るが、全部話しておくんだぞ」
「あ、うん…」
「また来る」


そういうあいつの背中を見送った。静まり返る部屋で俺は平門とのやり取りを思い出していた。

どうして俺は手を伸ばしたのか、自分の行動なのにわからない。ただもう一度自分の手を取って欲しかった。

それから、…腕。
この行動が一番理解不能だ。何が約束のしるしだよ…。思い出しただけで顔が熱い。


「…変態」
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