短編
□暇=寂しい
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「…クソメガネっているのか?」
もはやそれが呼び名となっている貳號艇長。
そう呼ぶのは花礫だけで、訂正する気がないのは目に見えてわかるのでさせる気もない。
「外出中メェ」
「仕事か…」
「私用メェ」
「…あっそ。戻ったら教えろ」
彼の部屋の前にいる羊に命令すれば了承の声がした。
花礫は暇をつぶそうと平門の部屋の本を読むつもりで足を運んだが当人はおらず。勝手に入ることは羊が許してくれないので大人しく帰りを待つことにする。
――…あぁ…暇だ
无はツクモと勉強中で與儀は仕事で出掛けている。
部屋にある本は読み飽きた。
腹も減っていなければ眠気があるわけでもなく、この艇ですることがない花礫にとって退屈で仕方がなかった。
――つーか私用なら俺も街に下せよ
ここ最近、艇を降りることがなかったので気が滅入ってきているから一言声を掛けてくれればと、軽く舌打ち。
部屋に戻ってベッドに転がり込む。
枕元に置いてある本を手にして目を通すが読み終わったものはすぐに読み返す気になれず手放した。
輪に関わる前は暇さえあれば窃盗業を働いていたから、何もしていない今は自分に合っていない気がする。
一人静かにしていると色々と考えてしまう。
このままここで過ごしていいのか。
何のためにここにいるのか。
どう言葉にしていいかわからない感情に包まれてしまいそうだった。
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