short dream

□甘い甘い
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今日は10月31日。

そう、ハロウィンです。


『ハロウィン一色だなー』

死武専も今日は休校。

校内はお菓子を求める仮装した死武専生であふれていた。

あたしは不参加のつもりだったのだが、マカ達に押され渋々参加。

仮装はマリー先生に作ってもらった魔女のコスチュームだ。

死武専の敵に扮するだなんて少し気がひけるが、今日くらいは許してもらおう。

「……アカネか?」

校内をうろついていると後ろから名前を呼ばれた。

『やっと見つかった。遅いよ、キッド』

「すまない。マカ達に捕まっていた」

振り返った先には彼氏であるキッドの姿があった。

黒いマントに模造の鎌、それに死神様のお面。

キッドの仮装は見るまでもなかったが、死神のようだ。

『キッドのそれは仮装じゃなくていつもと変わらないよね……』

「まあな。しかし、みんなが死神の仮装をしろといってくるものだから」

仮装しなくてもキッドは死神なんだけどな……

『あ、そうだ。trick or treat、キッド』

今日はハロウィンなのだ、せっかくだしお菓子をねだってみる。

「菓子なら持っているぞ。ほら」

そう言ってクッキーの袋を渡してくれた。

『うわー、美味しそう! ありがとう』

甘いものが好きなあたしとしてはハロウィンはお菓子を貰える素晴らしいイベントだ。

……仮装さえなければね。

「俺からはあげたんだ。勿論俺にもくれるのだろう?」

『へ?』

「trick or treat」

キッドはそう言って手を出した。

あたしだってぬかりはない。

ちゃんと用意して……

『しまった。さっきパティに全部食べられたか……』

キッドに会う少し前にトンプソン姉妹にあったのだが、その時にお菓子を全て食べられてしまったようだ。

「なんだ、持ってないのか?」

『そのようです……』

キッドはしばらく考えると何かを見つけたような顔をした。

「今口に入れているのは飴玉か?」

『え、そうだけど』

あたしの口の中ではマカがくれた飴玉が転がっていた。

赤くて甘いイチゴ味。

「うむ。ならそれでいい」

キッドは悪戯に笑うとあたしに近づいてきて

『んっ⁉︎』

キスをした。

しかも、キッドの舌が口の中に入ってくる。

カランッ

そんな音が聞こえると名残惜しそうに、そして満足そうにキッドの唇が離れた。

「お菓子はこれで許してやろう」

キッドの口にはイチゴ味の飴玉。

『はぁ、これじゃあtrick or treatじゃなくてtrick and treatじゃない……』

キスという悪戯をした上に口の中のお菓子をとっていったのだからどちらもしたことになるだろう。

そう抗議するとキッドはまた笑った。

「俺にとってはどちらも甘いお菓子だからな。ちゃんとtrick or treatだ。確かにお菓子はもらったぞ」

そう言って歩いて行ってしまった。

イチゴの甘さがほんのり残る甘いハロウィンのお話。




甘い甘い
(本当に心臓に悪いんだから)

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