BL小説
□独占欲
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近頃のすぅちゃんは、前にも増してママに執着しているように見えて、僕は苛立ちを感じていた。
僕だけを追いかけて。
僕の手だけを握って。
僕だけに笑いかけて。
僕だけに依存して。
僕だけを・・・愛して。
そう、すぅちゃんに言いたくて、たまらなくて・・・おかしくなりそう。
「とも、ここに居たのか。・・・勝手に居なくなるな。」
目の前にはいつの間にかすぅちゃんが居て、帰るぞ、と手を差し出していた。
僕は舌をぺロッと出してすぅちゃんの手を握った。
「うん、ごめんね?すぅちゃんの手、温かいね・・・ねえ、すぅちゃん?もしかして、心配してくれたの?」
「なっ・・・別に、心配なんかしてないっ。ともが、突然居なくなるのは、いつものこと、だし・・・」
・・・ふふ。すぅちゃんって、解りやすいなぁ。
「すぅちゃん。」
僕は真っ赤になってそっぽを向いているすぅちゃんの華奢な身体を力一杯抱きしめた。
すぅちゃんの色素の薄い髪に顔を埋めてみると、微かに甘い香りが鼻を掠める。
「ちょっ・・・とも・・・苦しいから、離せって・・・」
「嫌だよ。僕、すぅちゃんが好きなんだもん!今のすぅちゃんは・・・どこかに行っちゃいそうな・・・そんな瞳をしてるよ・・・だから、絶対離さないっ・・・!」
「・・・と、も・・・。」
その瞬間、すぅちゃんの瞳から一粒の涙が零れ落ちた。僕は無意識にその涙を指で拭っていた。
無言で遠慮がちに僕の背中に廻されるすぅちゃんの両腕。
「・・・俺・・・ずっと、昔のとものことを思い出したいとか言って・・・今のともから目を逸らしていたのかもしれない。ごめん・・・」
すぅちゃんは僕に抱きついたまま肩口で話す。すぅちゃんの息遣いを間近で感じ、胸の鼓動が速くなる。
「でも・・・これからは、ともの全てを見つめて生きていきたい。好きだ・・・とも・・・。」
「すぅちゃん・・・僕も好きっ・・・大好きだよ、すぅちゃん・・・っ」
僕らのこの関係は、少し歪んでいるのかもしれない。
どこまで進んでも、そこにあるのはドロドロとした間違った愛情だけかもしれない。
それでも、止められない。
このすぅちゃんへの気持ちだけが、僕の中の確かなモノだと思うから。
fin.
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