ダンガンロンパEx.
□Chapter2「白い鳩は絶望の中を飛ぶ」 非日常編
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『超高校級の幸運』、雨野林檎さん。
彼女はいつも明るかった。この絶望的状況下でも負の感情を表に出すことはなかった。・・・誰に対してもそう。絶望に屈さない強さを持っていた。
兄の晴海君を亡くして、一時は落ち込んでいたけれど。また頑張って生きるよ、と私たちに宣言したのだ。他の誰でもない、彼女自身が決意したのだ。兄の分までずっと生き続けると。
だから彼女は生きなきゃいけなかったはずなんだ。この学校から出るときまで生き続けなきゃいけなかった。出なければ、世界は死んでしまった彼らをきっと忘れてしまうから。伝えられるのは、今生きている私たちだけだから。
みんなで協力して外へ出て、そうしたら犠牲になった彼らのお墓を作ってあげて、存在を証明してあげないといけなかったんだ。
それは誰よりも雨野さんが強く願っていたことだろう。
その彼女の、変わり果てた姿がここにある。
「ッ!・・・これ、は、」
後ろから声が漏れた。・・・朝霧さんだ。
いつからそこにいたのかは分からない。ただ、少なくとも雨野さんがどんな状況なのかは把握できているーーー把握できてしまっているらしかった。
嗚呼。知らない方がずっと幸せだったろうに。
「・・・何故だ。何故また犠牲者が出てしまったんだ・・・ッ!もう悩む必要はないと、死別に悲しむ人間をこれ以上見なくていいと、思っていたのに・・・!」
朝霧さんの悔しげなその声は切なかった。
希望が一瞬にして絶望に塗り替えられてしまうような、そんな心持ちがしていた。
そしてただただ、哀しかった。