短編

□愛憎憎悪
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○月×日
僕は妹が嫌いだ。僕の邪魔な双子の妹。
理由なんて山ほどあってとても書く気にはなれないけど、とにかく嫌いだ。
なのに妹ときたら、この年にもなってお兄ちゃんお兄ちゃんと僕の後をついてきて、ときに追いこし待ち伏せ、一向に離れようとしない。腹が立った。
だから最近は妹と離れて、クラスメートと話していた。帰る時も一応友達と一緒に歩いた。・・・まるでストーカー対策のようだが、これだけしないとあいつは諦めないだろう。
不満顔する妹を、鼻で笑ってやった。
はは、ざまぁみろ。

○月×日
・・・おかしい。ある日を境に、僕の周りから人が離れていったのだ。突然のことに驚いた。たまに哀れみをこめた目で見られる、無視をされる、等々。
いじめられているのか?などと思ったが、何か違う気がする。僕自身、後ろ指をさされるようなことはしていないのだ。
なのに今日、いきなりクラス全員が僕に集中攻撃などするだろうか?
また、妹が部屋にやって来た。・・・かわいそうなお兄ちゃん、と後ろから抱きしめてくる。
おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。おかしいだろ。

○月×日
それから一週間は仕方なく妹に付き合っていたのだが、ある日、別のクラスの女子が話しかけてくれた。
・・・なるほど。少し話を聞くと、他のクラスはいつも通りのようで、変わったのはうちのクラスだけのようだ。
そして、話ついでに告白された。妹に気を取られすぎて、好意を向けてくれている子に全く気づけなかったようだ。
まぁ、これで妹と距離を置けるだろう。僕は彼女と付き合うことにした。

○月×日
・・・なんてことだ。彼女が殺された。
学校は当然休み。僕は部屋でわんわんと泣いて泣いて泣きまくった。警察は通り魔による犯行ではないか、と疑っているようだ。早く犯人が捕まればいいんだけど。
妹が僕のことを心配し、ローズティーを持ってきた。・・・飲む気にはなれなかったので、こっそり飲まずに流したが。

○月×日
妹の様子がおかしい。
棚の奥の奥へ『何か』を隠していたので、本人が去った後覗いてみると、

○月○日
・・・犯人を見つけた。妹だ。妹が彼女を殺したのだ!
おかしいと思ったんだ。僕がクラスメートからハブにされていたとき、妹は「かわいそうなお兄ちゃん」と慰めてきたが・・・何故僕がかわいそうだと思ったのか。というか何故僕が不幸な目にあっていることを知っていたんだ?
答えは至極簡単だ、あいつが皆から僕を遠ざけていたのだ!!どうして今まで気づかなかったのだろう・・・!!!あいつこそ全ての黒幕だ。
今日、あいつを問いつめるつもりだ。もししらばっくれたりしたら、通報してやる。
覚悟しろよ、林檎。

○月○日
真実を隠すどころか、笑顔で肯定してきた。
それで、「今までみたいに二人で仲良くしよう」だって?
・・・こいつ、殺す。

○月○日
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死んでしまえ!!!殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺殺殺殺殺して殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺して殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺殺殺して殺して殺して殺して殺して殺してやる殺してやる殺して殺してやる(以下、「殺してやる」の繰り返し)

○月○日
今日、僕は『 』と出会いました。
そして、恋にも似た感情が生まれたのです。
(人名が書かれていたであろう部分は塗り潰され、次の行から故意に破り取られている)

○月○日
今までの感情が全部全部くだらなく思えた。僕は、何をしてたんだろう。
ああ、どうでもいいや。
林檎は未だに笑っているけど、気にならない。僕が想うのは一人だけだもの。全然、気にもとめないよ?
・・・彼女は妹の隣でさ、「君を見ようともしないお兄ちゃんの目なんて、取っちゃえばいいよ」ってあいつに言ってるんだ。
彼女のお願いなら、僕はなんでも受け入れてあげる。あはは、大好き、大好き、大好きだよ。
大好き。大好き。大好き。大好き。
なんだか首が重いんだ。両手両足も重いんだ。どうしてかなぁ。鎖がついてるからかなぁ。愛の重さってやつかなぁ。
この首輪の先が、彼女の手にあると信じて。
この手錠の先が、彼女の手にあると信じて。
この足枷の先が、彼女の手にあると信じて。
僕は今日も、誰もが羨む仲良し兄妹を演じようと思います。
大好きだよ、林檎。

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