短編、中編

□妹は義妹
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5歳の時、私に年上の双子の兄弟ができた。
一番上の兄は真面目で努力家、二番目の兄はやんちゃで自由奔放。
そんな2人の兄に愛されてすくすくと育った私は私立泥門高校に入学したばかり。


「新入生の皆さん入学おめでとう。早速ですがこれから順番に自己紹介をやってもらおうかと思っているんだが・・・」


1年の教室ではどこも教師の学校での注意事項や自己紹介などを行っていて、ハナのクラスもその一つだった。


「名前は小早川瀬那です。高校生になったら中学の時みたいに消極的でなく何でも積極的にやっていきたいと思います」


前の席の小早川くんの自己紹介が終わり、教師が次に私の名前を呼んだ。


「次は金剛」


私は静かに席を立ち周りから視線を感じながらも語りだした。


「金剛ハナです。私の事は金剛って呼んでくださいじゃないとお兄ちゃんが怒ってプチッとしちゃうんで。特に男には名前を呼ばせるなときつく言われたので宜しくお願いします」


小さくペコリとお辞儀をして座りなおした。



変わった子だなと思った。
皆それぞれ中学の事とか高校でやりたいこととかを言っているのにこの子だけ最早自己紹介でもなんでもない名前と注意事項を言うだけの自己紹介だ。
プチッと、ってどういう事なんだろう?(勿論ハナが言ったプチッとは自分に対してではなく名前を読んだ男に対しての注意だったが瀬那や他の生徒が分かるはずがない)
少しだけ気になってその子の顔を見ようと後ろを振り向くと、ボクの真後ろには高校生には見えない可愛らしい黒髪の女の子がいて、振り向いた際に一瞬ちらりとこちらに向いた目は大きなぱっちりとした瞳でキラキラと輝いていた。
僕はこんな可愛い子が真後ろにいることに喜びを感じながらその子・・・金剛さんに向けた視線をさらに後ろの方へ向けたのまではよかった。
しかし向けた視線の先には怖そうな見た目の3人組・・・嫌な予感が頭を過ぎった。
だが瀬那は知らなかった。
この3人に対しての嫌な予感よりもこの3人によってある悪魔に目をつけられる嫌な予感を感じる事が出来ないことを。



嫌な予感に苛まれている瀬那の後ろではハナが早く終わんないと神龍寺学院寄れないな〜そうしたらお兄ちゃんの練習見れないな〜と呑気に思っていたのだった。
ハナが泥門デビルバッツ・・・いや悪魔に目をつけられる日はまだ先のよう。
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