短編、中編

□瞼を閉じて
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「今日のお宝は随分あっけなかったな・・・」

薄暗い廃墟の広間の一室で、あの有名な盗賊幻影旅団団長クロロ=ルシルフルはそう呟いた。
さっきまで100はいたであろう警備員、アマチュアハンターを惨殺してきたはずなのだが、そこは流石と言うべきだろう。

「・・・団長、この後何かあるような気がする。今日のターゲット嫌に簡単に手に入ったし」

クロロの座っていたソファーの前に和服を着た美女・・・マチが気になっていた事について報告をする。

「勘か?」

クロロも気になっていたのだろう・・・この仕事が簡単な理由を。
マチの勘はよく当たる・・・という事はこの後、何かしら侵入者が来る等のアクションが起こると言うことか・・・クロロはそう判断し、団員に注意を呼びかけた。

「俺達をどうこう出来る奴がいるとは思えないが、一応警戒しておけ」

クロロの注意により団員達はやる気になる。

「強い奴が来るかもな」

「侵入者かはまだ分からないんじゃない?」

「どんな奴でも殺せばいいね」

「情報の出所も探らなきゃ」

やる気を出した団員を見て、クロロは満足したのか手の中にある今回のターゲットに目を向け直した。





所変わって、幻影旅団の仮宿になっている廃墟の近くでひっそりと佇んでいる少年が1人。

『う〜む、困りましたね。お宝警護が仕事だったのに、木の上で居眠りしていたら盗まれていました。・・・依頼だし、奪還したらチャラになるかと思ったんですが、強そうな念使いがいっぱいいますね〜いやぁ、困った困った』

何とも呑気な台詞と共に、少年ヒカルは廃墟に向けて走り出した。





「来ねぇな、侵入者」

「いや侵入者が来るなんてマチ言ってないし!」

「でも、何かあるって言ったら侵入者が来るぐれぇだろ」

「でも来てねぇし」

『いますよ?侵入者』

突然見知らぬ少年の声が聞こえ、蜘蛛たちは一斉に声のした方向を向いた。

『そう侵入者はこのボ・・・』

ヒカルの台詞はフェイタン、フィンクスコンビの攻撃で呆気なく散った。
2人の攻撃で壁に大穴が空き、侵入者の生死を確認しようとフェイタンが近づこうとした瞬間何とも間抜けな言葉が廃墟に響き渡った・・・。

『酷い!折角侵入者はこのボクですって言おうとしたのに!!』

「・・・何なんだこのガキ」

「声かけられるまでワタシ達が気が付かなかた・・・」

フィンクス、フェイタンの言葉に団員達もそれぞれ頷き、土煙で未だ良く姿が見えない侵入者の様子を伺った。

『・・・コホッ!いきなり攻撃してくるとは思いませんでした・・・熱烈な歓迎痛み入ります幻影旅団の皆さん』

もうお気付きの方もいるでしょうが、そうこのヒカルという少年は何も考えていないお馬鹿なのです!

バコッ


「・・・お前殺すよ」

フェイタンにあっという間に二発目の攻撃を食らう・・・前に少年の姿が突然消える。

「「消えた!?」」

突然として消えた少年の姿・・・念能力者か?だとしたら一体どこへ消えた??
クロロやシャルナークなどの頭脳派と言われるメンバーは思考を巡らせた。
しかしまたどこからか少年の声が響く。

『またまた攻撃・・・ボクは平和的にお願いに参った次第なのですが、攻撃を止めてくれませんか?』

クロロはフェイタン達がまた暴れて仮宿を半壊させるのも困りものだと思い、またこの少年からは全く敵意を感じられないので了承するという合図に団員達に目配せをした。

「・・・分かった、お前等攻撃を止めろ」

クロロの言葉に特攻組は渋々拳を下ろした。
それを合図に少年は

『ふう、どうなることかと思いました』

と呑気に言いながら何とクロロの影から出てきたのだ!

「「!?」」

団員達の驚きの反応とは別にクロロは思案していた。
自分の影から目を瞑った美しい少年が出てきたのだ・・・欲しい、この少年の能力も体も何もかも自分の物にしたい・・・そう思った。

『・・・あのぅ、そんなに驚くことですか?』

ケロッとした様子で話す少年に驚かない奴はいね〜よと突っ込んだものは多い。

「お前は何者だ?」

『ヒカルです!』

「いや、何をしに来たとかそういう意味だったんだが・・・」

『ボクは便利屋です。何しに来たと言われれば今夜盗まれた物を返して貰うために来ました!』



今、便利屋と盗賊の奇妙な関係が始まる・・・。
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