黒子のバスケ(黒子受)

□【黄黒】@デートの約束
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「黒子っち、明日デートしよ?」
電話越しでも満面の笑顔が想像できるほどの明るい声。デートという単語に心臓が高鳴る。
「デート、ですか?」
嬉しいけれど、なんとなくその気持ちを知られたくなくて普段通りに返す。
「そうっス!うち明日から試験期間で練習休みなんだよね」
「黄瀬くん、練習が休みになる意味を分かっていますか」
実は自分も明日から試験期間のため練習はお休み。そして、最近会っていなかったのでデートのお誘いはとても嬉しいし、僕も黄瀬くんに会いたいと思っていた。でも、つい回答をじらしてしまう。

いつものあの一言を、君に言わせたくて。
君の口から聞きたくて。

「黄瀬くんは勉強しなくていいんですか?」
「最近黒子っち不足だから、勉強どころじゃないっスよぉ」
どことなく甘えるような声で言うと、少しだけ間が空いた。そして

「俺黒子っち大好きだから、少しでもたくさん一緒にいたいんスよ」

いつもの彼より少し低い声で、電話越しの耳元で甘く囁かれた。
『黒子っち大好き』なんて、もう何回何百回と言われてきた言葉なはずなのに、なんでだろう。何回言われても嬉しいし、どきどきしてしまう。少し回答をじらすだけで、彼は僕を好きだと言ってくれる。何回、何百回、きっとこれからもたくさん聞くことになる。それなのに、つい彼に言わせたくなる。何回でも、君の口から聞きたいと思う。ずっとずっと、この先何回でも。
「…いいですよ、デート」
本当は即答できたけれど、わざとじらした返事を伝える。電話越しの反応は予想通りの嬉しそうなもので、左右に勢いよく振られるしっぽが見えるようなそんな気さえする。

明日の予定を決め、少し雑談をしてから電話を切った。
明日の放課後に、いつもの駅前の本屋さんの前で待ち合わせ。そういえば、明日は黄瀬くんがモデルをしている雑誌の発売日だったっけ。立ち読みしていこうか。
久しぶりに会えるだけでも嬉しくてどきどきするのに、雑誌でのかっこいい彼も見れるなんて。それがとても楽しみだなんて。決して口には出さないけれど、自分の中に確かにあるその感情。
「僕も黄瀬くんが大好きに決まってます」
手元の携帯電話に向かって、そっと呟いた。


*******


黒子っちはあまり自分の気持ちを素直に伝えてくれないけれど、声とか表情とか、そういうのでなんとなく分かってしまうんスよね。黒子っちが求めてるものとかそういうの、言葉にしなくても伝わってくるんだ。だから、彼がわざと回答をじらしてるってことも、なんとなく分かっている。その理由だってちゃんと知っている。彼が求めているものだから気付いてないふりしている。君の期待に応えたいって思うから。

黒子っちは俺に『大好きだよ』って言葉を言わせたいんだ。

もちろん、そんなことがなくても黒子っちのことは大好きだから何回でも好きって気持ちを伝えたいって思ってるよ。それに、俺が好きって伝えると黒子っちはとても嬉しそうな反応をする。本人は隠そうとしたりするけど、俺にはすぐ分かってしまう。黒子っちが言ってほしいって、俺の口から聞きたいって言うなら俺は何回でも言うし、嬉しそうな表情もたくさん見たい。これから先、ずっとずっと何回でも。

だって、やっぱり君のことが大好きだから。
「明日が待ち遠しいっスよ、黒子っち」
愛しい君への言葉と共に、携帯に向かって微笑みかけた。
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