トリコ

□小さな子守唄
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「あ"?何してる、小僧」

「ゼブラさんが風邪を引かないように毛布を…………駄目でしたか?」

「…………っ、チョーシに乗るんじゃねぇ/////」

「すいません、ゼブラさん

…………おやすみなさい」

「待て」


小僧を呼び止めると、俺は上半身を起こしていた。
さっきから、コイツといると気が狂う。

何故、こんなにも、おかしくなっちまったんだ?


「ゼブラさん、何ですか?」

「この毛布、テメェのだろ」

「え、えぇ。

ゼブラさんたちがケンカしている時、ゼブラさんの毛布が汚れてしまって乾いてないんです」


美味そうな匂いのする毛布だ、小僧のものだとわかる。
それに、コイツの自己犠牲?には腹が立つ。
毛布を小僧に投げ渡す。


「テメェの毛布はテメェで使え」

「え!?
それだと、ゼブラさんが…………?!」

「るせぇ。
もう、眠いんだよ」


すぐさま横になる。
とっとと、寝ちまいたい。


「ゼブラさん、ありがとうございます

でも、僕は、ゼブラさんに風邪を引いてほしくないんです」


再び、温かい毛布をかけられる。
そして、同時に、温かいものが入ってくる。


「テメェ…………、小僧!」

「一緒に寝たら二人とも風邪をひくことはないですよ!」

「…………っ、勝手にしろ」

「はい、ゼブラさん!」


温かい体温が服越しに伝わってくる。
小僧の鼓動が、体に比例して小さくて、まるで子守唄みてぇに聞こえてきやがる。
鼓動が早くなると同時に、気持ちが落ち着いてくる。

コイツは、俺に毛布をかけてやるほどチョーシ乗ったやつだ。
だが、それが嬉しいと思うなんてな。
どんどん小僧で一杯になってきやがる。

この感情は、わけわかんねぇ。
ただ、俺は、コイツに惹かれてる。

でねぇと、あの時、食いもんのかわりにあんなこと、思わねぇだろう。


《だったらー…………テメェをくれ》


言わなくて正解だ。意味わからねぇしな。


小僧の鼓動がどんどんゆっくりなって、落ち着いた規則正しい寝息をたててきやがった。
寝たな、コイツ。


「…………チッ」


早く寝ちまおう。
でねぇと、俺ががどうにかなっちまいそうだ。


小さく聞こえる鼓動に耳を澄ませながら。
俺は、温かい眠りの淵に落ちる。




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