Devil May Cry

□愛が救済するは堕天使
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『……………………っ、あ"ぁああ"ぁあ"!!』


大きな礼拝堂で闇に堕ちた堕天使は苦しむ。
頭を抱え、苦しそうに叫ぶたび、空気が震える。
ダンテは、魔剣スパーダの切っ先を堕天使に向けた。
アミュレットがステンドガラスから射し込む月の光に反射して、赤い輝きを放つ。


          ネロアンジェロ
「俺が解放してやるよ黒き天使………………いや、バージル」


そう、今苦しんでいるのはかつて、バージルと呼ばれたダンテの血をわけた唯一の肉親であり、双子の兄だ。
テメンニグルによって繋がった魔界を封じる際、魔界の谷底へと堕ちた。
だが、魔界の帝王ムンドゥスによって殺戮人形として悪魔にされた。

兜が消え、苦しむ自分と同じ顔の兄に、かつての思い出を思い出す。
兄弟として生活し、やがて互いに惹かれ合い、兄弟としてではなく、恋人として触れあい愛し合った。
力を求める兄を止めることが出来ずに、こんな姿にされてしまった。
母の敵に、操られてしまう兄に憐れみと愛しさを感じた。


『…………!!』


苦しみながらも、ダンテを倒そうとするかつてはバージルだった堕天使。
鉄と鉄の交じり合う鈍い金属音。
幻影剣がステンドガラスに突き刺さり、ガラスが砕け散り、それは幻想的に二人の死合いを照らす。


「目を…………覚ましてくれよ、バージル」


名前を呼ぶと、僅かに反応し、頭を押さえて苦しむ。
まだ、心がある。完全には、支配されていない。


「バージル…………」

『…………っ!!』


ダンテを振り払うように剣を振る。
それを防ぎながら、何度も何度も名前を呼んだ。
それでも、苦しむだけだ。


「頼むよ…………大嫌いなカミサマ…………。
たまには、助けてくれよ…………」


泣きたい、泣き出したい、どうしたら良いのかわからない。
運がない自分に腹が立つ。
愛した人も救えない自分が憎い。


「バージル…………」


勢いよく突進してきたが、防ぐことも避けることもせず、ダンテは剣を宙に投げた。
そして、身体を貫く熱い何かを感じた。


「目を……覚ませよ」


剣で身体を貫かれた。
しかし、それでも気力で受けとめ、抱き締める。


「愛してる…………バージル」


朦朧となる意識の中、ゆっくりと深くキスをする。
貫かれた剣は抜かれ、その剣が床に落ちる音がした。


『……あ"……、ダ…………ンテ……』

「愛してる…………バージル」


2度目の衝撃が腹部を貫く。
それは、ダンテが先程宙に投げた魔剣スパーダだった。
それは、堕天使とダンテを共に貫いていた。


『…………っ、すま………な、い、ダンテ……』

「…………謝んなよ」


最後に意識を取り戻したバージルの身体が徐々に仄かな光を浴びて消えていく。
それは、バージルが解放されたことを証明した。


「…………おかえり…………バージル」

『…………ただいま…………ダンテ』


光が消えると、バージルは渾身の力を振り絞り剣を抜いた。
血が暫く流れ、直に止まった。
半魔だからこその回復力といえば良いだろうか。
しかし、バージルもダンテもわかっている。
もう、生きてはいられないと。


「生まれたときも、一緒なら…………死ぬときも一緒だな」

「愚弟め…………仇を討つ前に死ぬとは……な」


顔と顔を手で触れ、確かにいる愛しい人の温もりを確かめる。


「…………バージル」

「愛してる」


奪い合うようなキスを交わす。
そして、傷に温かな光を感じた。

バージルがそれを見ると、自分の傷口にバイタルスターをダンテがあてていた。
傷が徐々に塞がる。
対して、光を受けたダンテの傷口も塞がり始めていた。


「まだ、死なせはしない。
長年のツケを返してもらうまでは…………だからな?」

「…………愚弟め。
一生かかっても返してやる」



バージルはダンテのもとに帰ってきた。
それは、最早奇跡と呼べることだろう。

愛が救済した、と言うのが相応しい。
バージルは、そう考える。






END
13/03/04
 

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