ファイブレイン

□天女が微笑む
1ページ/2ページ



僕はたまたま、演劇部の部室の前を歩いていた時だ。
中から、カイト君の声がした。
ドアに手をかけてみようとしたが、僕は立ち止まった。


「…………ぅあっ、くるしっ!」

「…………チッ、中々おさまらねぇもんだな」


あぁ、何だ。ギャモン君もいるのか。
それにしても、二人とも何をやっているんだろう?
今日は学園祭だっていうのに、店回りをしないのだろうか。


「…………っ、キツいな」

「なんかが…………っ、でちまいそうだ」


キツい?出る?
カイト君、ギャモン君。
君たちは何をやっているんだ?
君たちは、同性なのに付き合っているのかい?!
駄目だよ、男同士は!
僕だってカイト君が好きだけど、諦めたんだからね!!

そんなことより!!

カイト君が、こんなに可愛らしい…………じゃない。卑猥な声を出しているなんて
ここでヤっているのかい?!


「ギャモン…………っ、も、むりぃ!!」

「俺も、そろそろヤベェ………………、いくぞ…………」

「…………くっ、ぅ、あぁあああっ!」

「君たちは何をやっているんだい?!
ここは学校だよ?!」


カイトの叫び声が轟く。
僕は扉を開けて中に入った。

ギャモン君は、額に浮かぶ汗を腕で拭うとニヤリと笑った後、僕を見た。


「おー、軸川センパイ

何って、これからカイトがノノハと出演する竹取物語の衣装着せてんだよ。
今日は学園祭だから、別にいいだろ?」

「やっぱ、このコルセット、キツい!」

「バカイト!テメェーが痛がって長丁場になっちまっただろー?!
俺の手がもう、コルセットの紐の後でこんなんなっちまったんだ!!
テメェが痛いとか、痛くないとか、問答無用でやるしかねぇだろう!!」

「俺だって、なりたくてなったわけじゃねぇ!
テメェの指なんか知るもんか!

後で覚えてろよ?!」


カイト君はギャモン君と言い争いながら衣装を着始める。
そういえば、もうすぐ竹取物語の公演時間だ。
ノノハ君は、よくヘルプで呼び出されるから、カイト君が道連れになったんだね。
キュービック君は科学者の皆さんに発明を披露してるだろうし。
アナ君も、絵の取引とかかな?
すると、カイトとギャモン君しかいないね。


「カイト君は、何の役をするの?」

「この女物の服だ、軸川センパイはわかってんだろ?」

「冗談キツいってー」

ギャモン君が言った通り、僕はわかっていた。
ただ、少し意地悪をしたくなった、と言おうか。
すると、ノノハ君が血相を抱えて入ってくるなり、カイト君の髪を引っ張りながら連行する。


「ほら、カイト!時間ないんだから!!

ギャモン君、ありがとう!
軸川センパイも、劇見に来てくださいね!」

「頑張れよー、ノノハ、バカイトー」

「ちゃんと、見に行くよ」


残った僕とギャモン君は、すぐに公演場所である体育館へと向かった。
途中で、僕はギャモン君に今年は女装コンテストに出ないのかい?てからかいながらね。
ギャモン君は、女装する趣味はねぇよ。どうせアナが勝つだろうがと、笑ってみせたけどね。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ