ファイブレイン
□存在証明
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頬を打つ冷たい滴、ザワザワと周りが騒ぐ。
辺りをみたいのに、体が意思に背いて動かない。
いや、動けないんだ。
ふいに、誰かが僕の顔の前にいることに気づいた。
必死に口を動かして、叫んでいる。
名前だ、僕の名前を叫んでいるんだ。
君に伝えたい事があるんだ。
精一杯の力を込めて、かろうじて口を動かして言葉を放つ。
「や……と、みて……くれた………んだ………ね……
かい…………と…………」
そこで、僕の意識は落ちた。
ー3時間前ー
決戦の時、カイトとノノハによって僕はリングから解放された。
それから、ピノクルやダウト、他のオルペウスオーダーであった者たちは、よく休日を利用して遊びに来ていた。
そして、今日は、僕がこっそり日本に遊びに来る日だ。
「おーい!フリーセルー!」
いつも迎えに来てくれるのは大門カイト、僕の友達だ。
「久しぶりだね、カイト」
「あぁ、そうだな。
にしても、急に今日来るって聞いて、ビックリしたんだぜ?」
「うん、ごめんね?」
「いいって。
今日は久々に一緒にパズルして遊ぼーぜっ!」
いつも会うたび、こんな感じに話をしている僕ら。
最近あったことや、学園のことも話すけど、やっぱりパズルのことをたくさん話す。
カイトは相変わらずなんだね、と笑みがこぼれる。
店で買ったクロスワードを一緒に喫茶店で解いてみることにした。
お題とヒントをもとに、ワードを縦や横に入れて言葉を導き出す。
カイトは、パズルをしているとき、一生懸命で楽しそうで、輝いている。
僕はカイトが大好きだ。
子供の頃からの憧れがカイトで、今でも憧れで…………
友達としてではなく、恋愛感情を含んだ好きなんだと気づいた。
「ちょっと、妬いちゃうな……
カイトは僕よりパズルをしている時が楽しそうなんだね」
パズルじゃなくて、僕を見て欲しいと思うのは当然だよね?
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