ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜

□来襲
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「やっぱりおめぇか…夜叉神‼この悪趣味ヤローが‼」


「…心外だな。私のものを横取りしたのはお前だろう?」


「訳わかんねー事言ってんじゃねぇよ!この悪趣味め!」



そう言って夜トと夜叉神は激しく 闘っていた。





夜叉神…


顔は分からないけど、なんでだろう…あたしこの人知ってる…!



この白檀の香り。




あの時。


あの土手に1人でいた時にも同じ香りがした。


初めてなんかじゃない。


その前だって、この香りをあたし…知ってる。



懐かしくて



…愛おしい香り。




あたしはひどく動揺をしていた。





…ガッ!

何かが切れる音がした。



「!」


(夜トっ…!)


「大した事ねぇよ。」



夜トの左腕から血が滲んでいた。


(や、夜トっ…)


あたしは夜トが切られた事で正気に戻った。


気がつけば夜トの息がかなり上がっている。


(…!)



あたしはその時、小福さんの言葉を思い出した。


「あたし達には、神器の感情が筒抜けなんだよねぇ」



あたし、さっき酷く動揺した。


夜トが辛そうなのは

…夜トが切られたのは、あたしのせいだ‼

どうしよう!






「…おめぇのせいじゃねぇよ」


(えっ…)


「あーっ!もう!おめぇのせいじゃねぇって言ってんの!オレの息が上がってんのは、コイツがムダにデカくて長くてあちぃせいなの!」


そう言って夜トは剛器を指した。


(ちょっとぉ!ムダって何よ!失礼しちゃうわねっ!)



そう言いながらも、夜トと夜叉神は互角に闘っていた。




「無名とはいえ、お前の事は私の耳まで入っていたぞ。夜ト神」


「へー、そりゃ光栄なこって」


「私と同じ疎まれる神だからな」


「…てめぇ…何が目的だ…!」


「(それ)は私が貰うのだ」







次の瞬間、夜トは上から地面に叩きつけられた。



…ヤベェ!



夜トの目前まで夜叉神の劔が迫っていた。






夜ト…!



危ない!!





あたしは思わず夜トを庇った。


…何も出来ない布なのに。
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