ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜
□迷い
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「はぁ…。」
あたしは2階に行って用意されていた布団の上にうつ伏せになった。
夜ト達は大黒さんに追い出され(特に剛ちゃんが…)てしまった。
あたしはどうしていいか分からず、ずっと気持ちはモヤモヤしたままだ。
コンコン…
襖をノックする音が聞こえた。
「はい?」
「小福だよ。白りん、入っていい?」
「あ、はい!」
あたしは慌てて布団から飛び起きた。
「白りん、寝てたぁ?」
「あ、いえ…なんだか眠れそうになくて。」
「過去の事?」
「…。」
あたしは静かに頷いた。
「白りんは知りたくないの?自分の過去。」
「…それがよく分からなくて。知りたくない訳じゃないんです。あたしが誰だったのか。でも…。」
「恐い?」
「はい…」
「そっかぁ…。でも白りん、過去を知って白りんは何か変わるのかなぁ?例えどんな過去だったとしても、誰だったとしても、白りんは今、夜トちゃんの神器じゃない。大切なのは今なんじゃないかなぁ?」
そう言って小福さんはニッコリ笑った。
「はい…。実はこの間、夜トにも同じ事言われちゃいました。…そうですよね。」
あたしはバカだ。
ウジウジ悩んだって仕方ない事なのに。
一体、過去を知る事の何が怖いんだろう。
「それにね、白りんがそんな風に気に病んじゃうと夜トまで病んじゃうんだよぉ!」
「えっ…?それってどういう…。」
「あたし達神は、神器の気持ちが一方通行で分かるんだよぉ。神様が悩んだりしても神器には何もないけど、神器が悩んだり、苦しんだりするツライ気持ちは神には筒抜けって事なんだぁ。だから、白りんが気に病んだりすると、夜トも体調に影響出ちゃうんだよ。」
あたしは思わず言葉を失った。
あたしはずっとモヤモヤして、ずっと悩んでいた。
だとしたら、夜トも同じ様に辛かったという事になる。
夜トも辛かったの…?どうしよう…
「大丈夫だよ☆夜トちゃん図太いからっ!白りんが悩んだ位、どうって事ないんだからぁ☆だから、白りんも元気だしてぇ!」
そう言って小福さんはあたしに抱きついてきた。
暖かくて、いい匂い…
小福さんはホッとさせてくれる神様だな…。
「はい…。」
あたしの目からは思わず涙が溢れていた。