ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜

□記憶
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「夜ト達まだかなぁ…。」


2人と離れてから3時間が経とうとしていた。


オレの神器で過去最強にお前は弱っちぃ布切れだからな‼
ウロウロすんな‼
天神とこにいろ‼


…と、夜トに言われ、とりあえず夜ト達の職場?の近くの河原に来てみました。


こうして1人になってみて気づいた事。


あたしって本当に影薄いんだ…。


あたしに気づくのは、犬や猫。
そして子供くらい。


後はスルーもスルー。



…様は霊感がある人はあたしが見えるとか、そう言う事なのか?




そしてもう一つ気づいた事。



「お腹空いた…。さ、寒い…。」



こういう感覚は死んでもあると言う事。


もー、こういう感覚、普通死んだら無くなるもんなんじゃないの?
なんか、死んでもあんまり変わらない。

死んだら天国とか、地獄とか、そういうのって、ただの空想の世界なんだって、しみじみ思う…。



「はぁ…」


大きな溜息。これで何回目だろう。
体育座りで土手に1人で座ってる女子とか…超虚しいんですけど‼

「うー…1人って寂しいなぁ…。」


俯いて、膝をかかえてしまう。








チリン…







鈴の音…?






誰かがあたしの髪を触ろうとした。





「‼」




「なんだ、起きてんのか?」


「や、夜ト…。」


「ん?なんだ、変な顏して。」


「あ、いや…お帰りなさい。」


「おー。」

「白ちゃーん‼お待たせっ☆待ちくたびれたでしょおっ!」


「いえ、剛ちゃんもお疲れ様っ。」


今日の出来事を話す剛ちゃんと夜トの姿を見て、あたしはいつもの笑顔になっていた。



「おぃ、白音。」


「え?」


「ほらよ。」


そう言って夜トはあたしにおにぎりを二つ渡した。


「腹減ってんだろ?食えよ。」


「!どうして…」


「依頼主が多めくれたんだよ。」


そう言って夜トはそっぽをむいた。


「ありがと…。」


夜トの優しさがなんだかくすぐったい。何のかんの言って、いいトコあるんだよね。

いつの間にか、さっきまでの不安も何処かに消えていた。








でも









鈴の音と白檀のほのかな香り






どうしてあたしはあの時、気づかないふりをしたんだろう…。
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