ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜
□故郷
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「故郷じゃと?」
「あぁ。分かるか?」
「そんなもん、死神にある訳ないが…。ヤツは高天原にも籍は置いとらんからな。確かに故郷があるとお前さんの神器が言うとったのか?」
「あぁ。」
「ふむ…」
寿老人は少し考え込んだ。
「あるとすれば…歪み、かもしれん。」
「歪み?」
「あぁ。ヤツならば彼岸と此岸の境目に歪みを作り、そこに独自の空間を創っとるかもしれんな。」
「おいおい、アイツそんな事出来んのかよ!?」
「まぁ、ヤツならばそれ位出来る力は持っとる。神の中でも異種じゃからな。」
「末恐ろしいヤツだな…」
「そんなヤツに挑もうとしとるお前さんも、異種≠カゃろうて?」
そう言って寿老人は笑った。
「けっ。で、その場所ってのは?」
「あくまでもワシの憶測じゃが、お前さんの神器と出会った場所が(入口)かもしれんな。…本当に行くのか?」
「いつまでも逃げてる訳にいかねーだろ」
「…無事では済まんかもしれんぞ?」
「無事に帰るさ」
「なんじゃ、お前さん。そこまでするとは、その神器によほど特別な思い入れでもあるのか?」
「ばっ…!ねーよ!」
夜トは少し頬を染めて否定をした。
「どーだかねー?」
「剛音!うるせーよ!!
…ただ、なんちゅーか…ほっとけねーって言うか…」
ごにょごにょ言いながら夜トが顏をあげると、寿老人と剛音はニヤニヤしていた。
「うっ…」
夜トは弱味を握られた感じがして悔しそうに2人を睨んだ。