ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜
□優しい手
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寿と別れた後、2人はずっと黙って歩いていた。
「夜ト…もし白ちゃんが死神に連れて行かれたら…あの子どうなっちゃうの?」
剛音は沈黙を破るように夜トに話かけた。
「……。ヤツの中に入って名無しの神器になる。でも中に入ったら最後神器としての(器)と意思が分離しちまうんだ。」
「分離?妖に食べられるのとはまた違うの?」
「あぁ。妖に喰われた場合は、意思も何もかも残らねぇ。でも死神は妖じゃねぇ。死の神だ。別にヤツは喰うワケじゃねぇんだ。器は死神を形創る物になり…意思は死神の闇の中で永遠に彷徨い続ける事になる。」
「そんな…!」
暗い、冷たい、何もない闇の中を
1人ずっと彷徨い続ける。
白音…
「オレがそんな事絶対させねぇ…!」
「夜トちゃんっ…!」
小福の家の方角から小福と大黒が夜トらに向かって走って来た。
2人共、かなり慌てた様子だ。
「小福…?大黒もどうした?」
「し…白りんがぁ…っ!」
小福も大黒も急いで来たのであろう、かなり息を切らしていた。
「白音がどうした!?」
「夜ト…!アイツ、いなくなっちまった!!」
「大黒!!どういう事だよ⁈」
「わりぃ…店前の掃除だからって油断した…」
「…!」
「夜ト…!」
剛音も心配そうに夜トの顏を見た。
「…小福と大黒は家に居てくれ。後はオレらで白音を探す」
「夜トちゃん…」
「今まで面倒かけて済まなかった。これはオレの神器の問題だ。これ以上、お前らを巻き込む訳にはいかねぇよ。…剛音、行くぞ」
そう言って夜トは小福と大黒に背中を向けた。
「夜ト、待ってよ!」
剛音は小福達に一礼して、夜トの後を追いかけた。