ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜

□優しい手
1ページ/3ページ

寿と別れた後、2人はずっと黙って歩いていた。





「夜ト…もし白ちゃんが死神に連れて行かれたら…あの子どうなっちゃうの?」



剛音は沈黙を破るように夜トに話かけた。




「……。ヤツの中に入って名無しの神器になる。でも中に入ったら最後神器としての(器)と意思が分離しちまうんだ。」


「分離?妖に食べられるのとはまた違うの?」


「あぁ。妖に喰われた場合は、意思も何もかも残らねぇ。でも死神は妖じゃねぇ。死の神だ。別にヤツは喰うワケじゃねぇんだ。器は死神を形創る物になり…意思は死神の闇の中で永遠に彷徨い続ける事になる。」


「そんな…!」






暗い、冷たい、何もない闇の中を




1人ずっと彷徨い続ける。





白音…





「オレがそんな事絶対させねぇ…!」











「夜トちゃんっ…!」



小福の家の方角から小福と大黒が夜トらに向かって走って来た。
2人共、かなり慌てた様子だ。



「小福…?大黒もどうした?」



「し…白りんがぁ…っ!」



小福も大黒も急いで来たのであろう、かなり息を切らしていた。



「白音がどうした!?」




「夜ト…!アイツ、いなくなっちまった!!」



「大黒!!どういう事だよ⁈」



「わりぃ…店前の掃除だからって油断した…」



「…!」




「夜ト…!」



剛音も心配そうに夜トの顏を見た。




「…小福と大黒は家に居てくれ。後はオレらで白音を探す」


「夜トちゃん…」


「今まで面倒かけて済まなかった。これはオレの神器の問題だ。これ以上、お前らを巻き込む訳にはいかねぇよ。…剛音、行くぞ」


そう言って夜トは小福と大黒に背中を向けた。



「夜ト、待ってよ!」



剛音は小福達に一礼して、夜トの後を追いかけた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ